「アーティスト・ランのプロジェクト」山岡佐紀子によるインタビュー (Index)

WolfArt (Rotterdam)

私、山岡佐紀子は、2012年4月から5月にかけて、スエーデンとオランダに滞在し、アートイベントなどに参加しました。私は、ここ15年間、ほぼ毎年最低1回はヨーロッパに出ており、主にアーティストが企画するアートイベントに参加しています。最近は、さすがに企画する人たちの世代交替を感じ、作品の傾向は当然ながら変化しておりますが、変わらないのは、アーティストたちが、どこでも活発に協力しあって、自分たちのやりたいイベントを続けていることです。ヨーロッパもまた2008年以後の経済危機の影響は色濃く訪れているのですが、日本の状況と違うのは、返ってアーティストたちの自主的な活動が積極的になっているところです。

このインタビューは今回関わった3つのイベントや研究グループのオーガナイザーに行ないました。実はある雑誌のための取材だったのですが、出版が来年になるということなので、鮮度が落ちないうちにと、まず自分のブログにとりあえずアップしました。そしてさらに、いろいろな方に是非参考にしていただきたいと思い、Taezへの掲載をお願いした次第です。掲載希望を受けてくださった、Taezの高橋晃さんに感謝します。どれもパフォーマンスアートに関するものですが、一般のファインアートとして、お読みになっても充分、通じる中身だと思います。

私の興味のポイントは以下の3点。

1. アーティストが企画すること、アーティスト・ランということの意味。
2. 教育活動が常に加えられているという最近の傾向。
3. パフォーマンスアートの魅力。

text: 山岡佐紀子

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アーティスト・ランのプロジェクト Index
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pals(1) PALS (Performance Art Links)
今年が、その第1回であるストックホルムのパフォーマンスアートフェスティバル。デニス・ロマノウスキーDenis Romanovski、ラビサ・ヨハンソンLovisa Johansson、エリック・ヴィクストロインErik Wijkströmの3人のアーティストたちにより企画された。…
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PAS(2) PAS (Performance Art Study)
パフォーマンス・アート・スタディズについては、数年前からその存在は知っていた。主催者のヨハネスのことも、その少し前から知っていた。今回は、私が参加した2つのアートイベントのどちらにも、PASは教育活動として、参加していた。…
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PAE(3) PAE (Performance Art Event)
「パフォーマンス・アート・イベント」は、オランダの港町ロッテルダムの若い3人のアーティストたちにより運営されている。オーガナイザーは、リーダー格のニナ・ボアスNina Boas、マータイ・ステリンガMartjin Stelinga、それからイケ・トリンクスIeke Trinksの3人。…
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山岡佐紀子 Sakiko Yamaoka 札幌生まれ
http://www.sakikoyamaoka.com/
作品は、以下の2つの方向性。
1. サイトペシフィック(社会コンテキストと視覚的条件)を背景とした作品。
2. ホワイトキューブでのファインアート系作品。
ワークショップ、レクチャー、写真、絵画などもある。
<主な作品>
「天使の監視」秋葉原駅を背景に監視カメラをテーマにした妄想型作品。Ustreamを使う。
「Love or Not」参加型ストリートアクションパフォーマンス。
「Blind Game」易とオセロをミックスした2時間のデユレーションパフォーマンス。
「空からの風」感情の変化を風にたとえてパーティテーブルを台無しにする。
「Best Place to Sleep」銀行ATMなどで少し昼寝をする。
「Come with Me」共犯意識を高めるふて寝系参加型ストリートアクション。
「Missing in Yokohama」事実とフィクションをMixした近代横浜を舞台にした自伝的作品。
「This is my sound」音と行為と身体をテーマにしたロジカルな小品。
「Drill」「Garden」「Hand-mill」「Topaz」「東京竜巻プロジェクト」など。
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◉「ヨコハマトリエンナーレ2011〜世界ってどこ? 山岡佐紀子が語る」
◉「優秀な通訳者」

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「アーティスト・ランのプロジェクト」山岡佐紀子によるインタビュー (3) PAE

Nina Wijnmaalen
Nina Wijnmaalen photo by Mladen Suknovic

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PAE

(パフォーマンス・アート・イベント)
http://performanceartevent.nl/

「パフォーマンス・アート・イベント」は、オランダの港町ロッテルダムの若い3人のアーティストたちにより運営されている。オーガナイザーは、リーダー格のニナ・ボアスNina Boas、マータイ・ステリンガMartjin Stelinga、それからイケ・トリンクスIeke Trinksの3人。マータイは現在サウンド系になったそうだが、3人とも基本的にはビジュアルアート系のパフォーマンスをするアーティスト。私は、イケと2011年3月にスペインで知り合い、仲良くなった。4月にストックホルムに来る予定があったので、彼女たちのイベントにも参加することになった。私が参加したイベントは、5月8日と9日の2日間ではあるが、先日このブログでも紹介した、PAS(パフォーマンス・アート・スタディ)との共催の形をとっており、イベントは4月27日から始まった。イケ自身が2010年にベルリンでPASに生徒として参加したことがあり、ロッテルダムの若者に経験をと、共催をオファーしたのだ。8日と9日のパフォーマンスイベントでは、PASの生徒6人と、教師2名もパフォーマンスを行った。以下、インタビューは、イケ・トリンクスに行った。
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イケ Ieke Trinks
イケ Ieke Trinks

———— PAEを始めた経緯などをお聞かせ下さい。
イケ・トリンクス : PAEは2008年に、ニナとマーティンの二人が始めました。ふたりは、フィンランドのパフォーマンスアートフェスティバルに参加し、パフォーマンスアートが、どれほど、観客に関心を持たれているのかを見て、刺激を受け、それをロッテルダムで行ないたいと思うようになりました。ここでは、パフォーマンスアートはあまりポピュラーではありません。アートの専門家ですら、よくは知らないと思います。また、誤解もされていると感じていました。国際レベルのパフォーマンスアートには、いろんな種類があることを見てもらいたいと思いました。そして、さらに、重要なことは、若い人たちやまだアートを始めたばかりの人たちに、チャンスの場を作りたいと考えました。私自身は、2009年からの参加です。ニナが私に協力を求めたのです。私もとても、興味があったので、参加しました。わたし自身、パフォーマンスアートは始めたばかりで、オーガナイザーとして働くことで、学ぶ事が多いだろうと期待しました。

——- あなたはどうしてパフォーマンスアートに興味を持つようになったのですか?
私は、以前は、写真やビデオの作品を作っていましたが、やりたいことがその方法では充分ではないと感じていました。それまでの作品にも、すでにパフォーマンス的な要素があり、身体を使うことに興味がありました。また、ある展覧会が終わった後に、材料の多くをゴミにしてしまったことがありました。私はそのことで悩みました。私は、この世界にある、私たちが作り出した様々な「物」に対して責任があり、この消費社会に対する私の意識を示さなくてはならないと感じました。もちろん、私は天使ではないので、なおも作品のために材料を買ったり、飛行機に乗ってエネルギーを使ったりして、環境破壊に加担していますが。私がパフォーマンス作品にひかれたのは、それが基本的に「物」ベースのものではないというところです。パフォーマンスの作品は、物ではなくて、時間をつくります。パフォーマンスアートは、自分の理想を完成させるというよりは、アイデアのプロセスであり、それを発展させる場所です。私のその実践を、観客の目前で、あるいは観客とともに行なうことにより、その問いをわけ合い、交流することができると思います。そのことに、私は魅力を感じています。

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ニナ Nina Boas
ニナ Nina Boas
マータイ・ステリンガMartjin Stelinga
マータイ・ステリンガMartjin Stelinga

———- PAEでは、どんなことをしていきたいですか?

まだはっきり方針が決まりません。できたら、毎年、インターナショナルなイベントをしていきたいです。といって、規模を大きくしたいというような特別な野望はありません。先輩アーティストからの助言があり、去年の9月からは、毎月の小さなイベントを、始めました。ほとんど予算なしですが、アーティストや観客ができるだけ多くの機会を持つことが大切だと思いました。また、今年になって、アート・ロッテルダムというアートフェアの中でのイベントの参加という、大きなオファーもありました。彼らはパフォーマンスアートにとても興味があるようで、私たちにとってもいい機会だと思うのですが、予算や時間的に、私たちの今の能力では、ちょっと厳しいものがありました。そんなこともあり、今後のために、新たなメンバーを加えるかもしれません。
オーガナイズの方法として、何か新しい方法を考えてもいいと思います。まだ、私たちは若くて、もっと学ばなくてはなりません。私たちは、ローカルイベントとインターナショナルの両方をしたいし、パフォーマンスアートネットワークだけでなく、普通のアートのものとも関わりたいのです。
オーガナイズをすると、あるアーティストがどのように考えて作品を作るのかと言う方法を学ぶことができます。また、オーガナイザーやキュレーターが何を考えるのか、知る事ができます。

—— PAEがいつも使っている会場である、Wolfartはどういう場所なのでしょうか。

Wolfartプロジェクトスペースは、もともと、ミュージシャンであるアーティストたちによって、いわゆるスクワットされ、運営されている場所です。彼等は、主にコンサートやその他の様々なイベントをプログラムしています。Wolfartと言う名は、ストリートの名であるWolphaetから来ています。同じストリートは同じ頃に、たくさんの建物がスクワットされました。この南ロッテルダムには、New Ateliers Charlois(NAC)という名のアーティスト・ランのファンデーションがあります(2004年設立)。彼等は、地域に空きビルをみつけ、地域の住宅を供給する公社と交渉して、一定期間借り受け(例えば10年)、アーティストのためのスタジオや住居とし、安い金額で貸しています。Wolfartもその1つです。ニナはそこに住んでいるので、私たちはいつも、Wolfartを使うことができます。NACは、賃料の他にも市の開発基金のようなところから、補助金も得ています。そして、私たちの企画は、いつもNACの基金から助成を得ています。わたしが知る限り、オランダにはこのようなアーティストランのファンデーションがたくさんありますが、NACは成功している例として、外国の都市開発組織からも招待され、紹介されることも多い有名な組織です。

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Willem Wilhelmus
Willem Wilhelmus photo by Mladen Suknovic

——- あなたは、オランダという国で活動していますが、政治的な面で社会から影響を受けることはありますか?

私自身の作品には、政治的なことは、あまり関係しません。影響があるとすれば、商品文化やコマーシャルなことに関わらないパフォーマンスアートを、私が選んでいるということでしょうか。アートは社会に向けて、ある確かな態度を示すことで、充分、政治的なのではないかと思います。
具体的に、昨今のオランダの政治的な面で言えば、アートに対する予算が大幅に削減されていることが、私たちの活動に影響しています。オランダのアーティストやアートインスティトゥーションは、80年代からずっと、非常に良い状態でやってくることができました。この30年というもの、助成金が充実しているだけでなく、プロや経験のあるアーティストには、福祉のシステムすらありました。しかし、最近、多くのインスティトゥーションは、助成が受けられなくなり、中にはやめてしまったところもあります。オランダのアートに重要な役割を持っていたとても重要なアートインスティトゥーションが立ち行かなくなってきているのは、とても、残念に思います。長い間、培った専門知識が失われてしまいます。私たちPAEも、今回の企画では、国からの助成は、落選してしまいました。確かに、パフォーマンスアートは少し、他の表現形式よりもさらに、厳しいとは思います。なぜなら、直接的にコマーシャルな要素が乏しく、収入も見込めませんから。それで、選んでもらえなかったのだと思います。しかし、私はこの状況が続くとは思いません。9月に選挙があり、政権が変われば状況が良くなる可能性があります。アートシーンからの熱心な警鐘や存在アピールがなされています。

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Yamaoka work_Blind Game
Yamaoka work_Blind Game photo by Mladen Suknovic

———- 地域社会との共同企画があると聞きましたが、それはどんなものですか?

ロッテルダムは、労働者クラスの都市なので、低収入や失業者、また、トルコ、モロッコ、アンティル諸島からの移民のグループがかなり多く住んでいます。いわゆる多文化社会です。市は、アートやアーティストたちの持つ雰囲気に興味を持っています。アーティストたちは協力しあって低予算でイベントを企画するのが得意だからです。しかも、ロッテルダムには、たくさんのアーティストが住んでいて、お互いにオープンで、コラボレーションや交流イベントをすることに積極的です。また、私が住んでいる南ロッテルダムは、貧しく、犯罪やドラッグの問題もあります。市当局は、これまでも問題を解決するために、多大なエネルギーや費用をかけてきました。そして、このごろは、アーティストによる、地域コミュニティを巻き込んだプロジェクトを期待するようになってきたのです。しかし、地域の人たちで、アートに関心がある人は一握りだし、彼等のサバイバルだけで充分忙しく、無理にアートを押し付けられても、という面もあるでしょう。一方、アーティストたちはソシャルワーカーのようになってしまうかもしれません。そうは言うものの、なかなかうまくいった素敵なプロジェクトもあります。たとえば Kus&Sloop は、ホテル兼アパートのプロジェクトです。 空き部屋やアパートをホテルのように貸し出します。アパートのインテリアは、近所の店が協力してセットアップします。カーテンを売る人、それを縫う人はトルコの女性、掃除する人も近所の人。そこに泊まる人は、近所のモロッコベーカリーでパンを買います。などなど、近所一帯のマルチカルチャーな人たちがアパートの運営に関わるのです。泊まる人たちは、地域多様性を、楽しむことができます。私たちPAEも今回、このプロジェクトを利用して、PASのメンバーや生徒さんたちや、アーティストたちを滞在させました。
PASのための会場として、また、パフォーマンスイベントの2日目の会場として、利用したGemaal op Zuid(ケマール)も、地域のコミュニティのためのスペースです。
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アーティスト・ランのプロジェクト
(1) PALS (performance art links)
(2) PAS (PARFORMANCE ART STUDIES)
(Index) & 山岡佐紀子プロフィール

「アーティスト・ランのプロジェクト」山岡佐紀子によるインタビュー (2) PAS

Kirsten Heshusius
Kirsten Heshusius photo by Monika Sobczak

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pas

PAS (パフォーマンス・アート・スタディズ)
http://pas.bbbjohannesdeimling.de/

 パフォーマンス・アート・スタディズについては、数年前からその存在は知っていた。主催者のヨハネスのことも、その少し前から知っていた。今回は、私が参加した2つのアートイベントのどちらにも、PASは教育活動として、参加していた。ストックホルムでは、ヨハネスがレクチャーをするだけだったが、ロッテルダムでは、10日間のフル・プロジェクトが開催され、その中で、私もちょっとだけ、レクチャーを承った。
パフォーマンスアートは教えられないだろうと、よく言われる。素人でも、ぱっとやれる分野だと思われている。それは大きな誤解なのだ。身体の訓練ではなく、アイデアと実践の勉強はやはり、必要なのだ。欧米では、アートスクールのクラスの中で、パフォーマンスアートの勉強をする時間を設けているところは少なくない。しかも、ヨハネスは、学校ではなく、出前式の「ティーチングというパフォーマンス」の実践している。つまり、私たち日本の状況の何歩も先を行っているのでは?
PASでは、主催者のヨハネス・ディームリング(BBB Johannes Deimling)の他に、アシスタント講師として、マルセル・スパーマン(Marcel Sparmann)、その他に、写真家が2人。この4人のチームが全員揃って、PASは成立する。4人のうち、3人がドイツ人、写真家の一人はポーランド人である。

インタビューは、2012年5月7日、ロッテルダムでの、PASのプログラムの最中の昼休み、近くのカフェにて、ヨハネスとマルセルの2人に、行なった。

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BBB Johaness Deimling
BBB Johanness Deimling

—— パフォーマンス・アート・スタディズとはどういうものですか。

ヨハネス: PASは、2008年に設立しました。それ以前の15年間、私は、様々な形でパフォーマンスアートを教えるということをしてきました。美術アカデミーや学校、大学などです。そして、それを通して、そして、教えることをパフォーマンスとして、発展させられると考えるようになりました。教えることで必要とされる、空間と時間とプロセスは、パフォーマンスアートを創るためのツールと同じです。ティーチングパフォーマンスは、なにより自由なスタイルをとりたいと思いました。研究室はおろか、オフィスすらありません。ここでも、私たちは、アーティストであり、同時に、教師で、ディレクターで、かつオーガナイザーなのです。これは、学校のプロジェクトではなく、アートプロジェクトです。アートの学生だけでなく、一般の生徒も教えます。教えるプロジェクトですが、いわゆる「エデュケーション」ではないのです。また「ワークショップ」という言葉は全く不十分です。これは、生徒にとっても私たちにとっても「研究」なので、むしろ、「ペダゴティック(教育学)」と言っても、良いかと思っています。たぶん、「アイ・オープナー」という言葉が一番、合うかもしれません。つまり、パフォーマンスはパフォーマンス。あなたはあなただし、私は私です。しかし、ある時、目を開けば、それは、何かである、というような発見をする。そのための研究と創造の経験です。
ここでは、様々なことをします。アートだけでなく、解剖学や美学、デザイン、写真についても、教えます。パフォーマンスアートに必要なことは、そのメソッドから始まり、あらゆる角度から、創造性ということを学ぶことができます。そのためには、最低でも10日間は必要です。しかも、日程ごとの予定は予め、決めません。参加している生徒たちに、ふさわしいことをするために、その日その日のディスカッションを通して、翌日にすることを決めます。パフォーマンスである以上、そのような自由さが大事なのです。

Nina Wijnmaalen
Nina Wijnmaalen photo by Monika Sobczak

——— 美術系でない生徒にも教えるということですが、このプロジェクトに参加することが、彼等の将来や現在の生活にどんな役に立つと思いますか?

ヨハネス:パフォーマンスをつくるプロセスは、生きている中での問題を解決するプロセスに、適応しています。精神的な問題ではなくて、もっと基本的な問題です。どうやって生き延びるかとか、どう朝起きるかとか。彫刻や写真と違う点は、たとえば、パフォーマンスアートで見つけた方策は、生活の中で使うことができます。状況や形式が、ある意味、生活の状況と似ているのです。

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Marcel Sparmann
Marcel Sparmann

マルセル:私たちは、パフォーマンスアートだけを教えているわけではありません。創造性ということを教えています。まず、どうやって、そのプロセスを始めるか。そして、それは、個人的なプロセスをどう始めるかと同じなのです。2ヶ月ほどまえに、行なった10代向けのプロジェクトでは、13歳から19歳までの生徒たちが集まりました。アナという13歳の子は、ウクライナ出身で、最初、特に何かを話す子供ではありませんでした。ところが、最後のプレゼンテーションが近づくと、突然、彼女は彼女の個人的なことを話し始めたのです。彼女のバックグラウンド、ウクライナからドイツに来たこと、違った文化の中でどう生きているか、などを。そして最終的に彼女はすばらしいパフォーマンスをつくりました。「シフト」というタイトルで、自分が変わるプロセスを作品にしました。気に入ったイメージをそこへ持ってきて、自分に適応させ、再創造し、そして最後にはそのイメージを自分自身のものにしました。

—— それは、もちろん、セラピーではないのですね。

ヨハネス: 全く、違います。セラピーは、誰かが誰かの個人的な問題を解決するためのものですが、パフォーマンスアートでは、それを具体的に解決するわけではありません。私たちは、ソシャルワーカーでも、精神科医でもなく、アーティストです。私たちは、トピックを開く方法、つまり、人が気のつかない部屋の隅にあるようなこと、一般の人はざっとそこを表面的に見るけれども、私達は違う角度から見るということを促します。なぜなら、私たちの方法は「研究(studies)」だからです。たとえば人は、人生で何をしたらいいか判らなくなった時、葛藤しますね。その葛藤は、オリエンテーションであり、美であり、存在の証明そのものなのです。人は、道に迷う。パフォーマンスは、どのような「構造」を、個人的な人生に持たせたらいいかを、考えさせてくれます。

photo by Sakiko Yamaoka

マルセル:たぶん、それは、新しい言語を学ぶようなことだと言うことができます。たとえば、私が日本語を学ぶとします。勉強しなくてはならないし、本や辞書が必要です。勉強すれば、話したり、書いたりできるようになります。そして、翻訳方法、質問、感じ方の表現方法を学んで、自分自身を表現するのに、使うことができるようになります。自分がしようとしていることのイメージを表現する方法を増やしてゆけば、それは一種の辞書になってゆきます。それを使い、見つけたことや経験を話し、話題、質問などを話すようになれます。それは他の言語、アートという言語を使って、コミュニケーションができるようになるということです。そして、個人的なアプローチがスタート地点です。実のところ、内面では、たくさんの人が、同じ問題をかかえています。その言語によって、どのように何かをみつることができるでしょうか。それは、自分だけのためではなく、他の人のためでもあることがまた重要です。私もここで学んでいます。

—— ここでは、作品をつくり、パブリック化するというゴールがありますね。

マルセル:このプロジェクトでは、最後にプレゼンテーションをすることを重視しています。プロセスは、教育的かもしれませんが、私たちは、アーティスティックな展開を期待しています。ですから、最終的には、展覧会やパフォーマンスイベントを必ず行ないます。インビテーションカードやポスターをつくり、キュレーターや観客を呼びます。アーティストが作品を発表することと同じなのです。私たちは、生徒たちが作品を制作するための、ファシリテーターと言っても良いでしょう。今回のように、他のフェスティバルやアートイベントと共催することはよくありますが、両方のために、有益な方法だと思います。

photo by Sakiko Yamaoka

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アーティスト・ランのプロジェクト
(1) PALS (performance art links)
(3) PAE (Performance Art Event)
(Index) & 山岡佐紀子プロフィール

「アーティスト・ランのプロジェクト」山岡佐紀子によるインタビュー (1) PALS

photo by Sakiko Yamaoka

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PALS(パフォーマンス・アート・リンクス)

PALS(パフォーマンス・アート・リンクス)
http://www.palsfestival.se/

 今年が、その第1回であるストックホルムのパフォーマンスアートフェスティバル。デニス・ロマノウスキーDenis Romanovski、ラビサ・ヨハンソンLovisa Johansson、エリック・ヴィクストロインErik Wijkströmの3人のアーティストたちにより企画された。期間は、2012年4月17日〜22日。
デニスは、私が2003年にベラルーシの首都ミンスクでのパフォーマンスアートフェスティバルで会って以来である。ミンスクには、Navinkiというパフォーマンスアートフェスティバルがあり、彼はそのオーガナイザーの1人だった。そして、2006年に、彼はストックホルムに移住した。そして、新しい仲間を作り、たった6年で、フェスティバルを立ち上げた。そのたくましさに私は、すっかり脱帽。今回会った時、まず、おめでとうを言った。その間、私は何をしていた?
以下のインタビューは、PALSのフェスティバルが終わった翌日の4月23日に、デニスと行なった。途中からエリックが加わった。デニスは、いつもクールで、笑顔以外の感情を見せない人なのだけど、インタビューの書きおこしのために、ビデオを何度も再生して彼の言葉を聞いているうちに、その静かな語り口の奥の秘めたる情熱に気づき、私は、すっかり驚いてしまった。彼が「それなしには生きてこれなかったかもしれない」こととは何であろうか?
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デニス Denis Romanovski
デニス Denis Romanovski

—— ストックホルムでは、このところ、パフォーマンスアートが盛んになってきたようですね。理由は何だと思いますか?

デニス: いくつかの要因があります。まず、政治的に保守化して、助成の予算が減り、お金のかかる展覧会がやりにくくなってきていますが、パフォーマンスアートは低予算で、企画できるということがあると思います。それから、2年前にスェーデンのフルクサスについての本が出版されました。それがきっかけで、アート理論家やキュレーターたちが、パフォーマティビティ、インタラクションというトピックについて、興味を持つようになってきました。そして、いわゆるメジャーの展覧会でも、オープニングにパフォーマンスアーティストを呼ぶことが増えてきました。なぜなら、ハプニングやちょっとしたスキャンダラスなことは、一目をひき、人を集めます。しかし、この場合、やはりエンターテイメントやスクペクタルなものになりがちです。むしろ、より重要な要因としては、2006年から、ストックホルムで「Super Market」と言う名の、アートフェアが始まったことかもしれません。このフェアは、ノンコマーシャルです。アーティスト・ランのプロジェクトやアーティスト・ランのギャラリーが集まり、当初は、アートマーケットではないからと、「Mini Market」という名で、始めました。そして、国内外からグループが参加し、大成功をおさめたのです。それで2年目からはSuper Marketという名前に変わりました。このフェアで、昨年、私たちはパフォーマンスのプログラムをオーガナイズしました。そこで、40人のスェーデンのパフォーマンスを紹介し、たくさんの人に見てもらいました。この企画が、パフォーマンスが盛んになってきた大きな理由の1つだと言って良いと思います。

—— PALsはどのように設立できたのか、その経緯を教えて下さい。

デニス:その年は、それ以外にも、私たちは「No Budget Performance」という名のイベントを6回企画しました。予算はないけれど、参加したいアーティストたちには、自由にやってもらい、私たちはそのパフォーマンスのアレンジメントを行ないました。ストックホルムには、少ないながら、あちこちにパフォーマンスをするアーティストが出てきたのですが、皆、別々の活動をしていました。それらの人々をつなげたいと思ったのです。ヨーテボリやフィンランドのアーティストたちが参加しました。そうした経験を経て、私たちは、今回の国際的なパフォーマンスフェスティバルを開催する準備をしていました。

Bartolome Ferrando
Bartolome Ferrando photo by Denis Romanovsoki

—— パフォーマンスフェスティバルの開催は、社会へ、どんな貢献ができると思いますか?

デニス:まず、フェスティバルそのものが、社会へのデモンストレーションです。政治的なアクションでもあるのです。それから、具体的には、私たちは、教育面に力を入れました。パフォーマンスアートは、日常の生活でしていることと似ていますが、そのあたりまえの生活を一旦止めて、違う角度からの視線を持つ、良い機会です。パフォーマンスアートは、オルタナティブなコミュニケーションの方法を提供します。私達は、スェーデンだけでなく、フィンランド、ノルウエー、ドイツ、ポーランドなどでパフォーマンスを教えている先生たちに来てもらいました。あちらこちらの学校のアートのクラスとクラスに橋をかけ、生徒と生徒をリンクしました。フェスティバルは6日間で、そのうちの最初の3日間はワークショップでした。学生だけなく、社会人も参加しました。さらに、フェスティバルの最後の日は、12時間のフリータイムとし、生徒たちは、アーティストと混じって、自由な方法で、作品を発表しました。プロのアーティストたちと、同じ空間で、同じ状況で、作品をつくり、同等に話すのは、とてもいい経験で、一種の学校でもあったと思います。そしてまた、アーティストにとっても助けになります。若い世代の存在は、先輩のアーティストにいい効果があります。子どもたちは、親たちをしばしば、叩きますね。子どもたちが近くいれば、先輩のアーティストは、自分の作品に責任を感じるでしょう。

Yaoamoka work_Lef to us
Yaoamoka work_Lef to us photo by Denis Romanovsoki

—– どのようにアーティストを選びましたか。

デニス:パフォーマンスアートのネットワークの中で、会った事のある人たちを選んでいます。他のアーティストとのつながりを持って、アクティブに活動しているアーティストです。そして、さらにリンクを広げて行きたいのです。半分がスエーデンからで、半分を外国からというバランスをとっています。気持ちとしては、もっとたくさんのいろんなアーティストを呼びたいと思っています。選ぶのは辛い作業ですね。

——– あなたは、リンク、コネクトする、あるいは、ばらばらである、と言う言葉をよく使いますね。それはあなたにとって、特別なキーワードなのですか?イベント名にあるLinksというのは、どんな思いがこめられていますか。

デニス: パフォーマンスアートのフェスティバルは、人間ベースのネットワークがベースです。なぜなら、パフォーマンスアートの作品はアーティストに直接来てもらわないと成り立ちません。アーティストたちは、参加しながら、旅をして、ネットワークを編んでいます。私たちは、まず、スエーデンのアーティストたちをリンクすることから始め、彼等を、国際的なアーティストのネットワークに紹介しようとしたのです。人と人とをつなげるのは、すてきなことですよね。経験ないですか?誰かに会って、それはとても素敵な人だったので、そうだ、この人をあの友達に紹介しよう、きっとマッチすると思う、みたいなこと。私の経験で言えば、すばらしいアーティスト、すてきな人たちに会うと、エネルギーを感じ、私自身が、生き生きとしてきます。そして、そのこの経験が、私の人生を、どれほど、助けてきたたことかと思うのです。たぶん、私は、それなしには生きてこられなかったでしょう。

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エリック Erik Wijkström
エリック Erik Wijkström

エリック:そう。誰だって、誰かを捜しているのではないでしょうか? 自分とアイデアの似た人がどこかにいるかもしれないと。 それをやめてしまったら、一人で固まって、世界の中で孤立してしまいますよね。それに、とても違うタイプの人に会うのも、価値のあることだと思います。知識も得られるだけではなくて、それをシェアしあえれば、もっと豊かになれます。

—— 次回のフェスティバルで発展させたいことはありますか?

デニス:同じことを続けていって、ルーチンワークにはしたくはないと考えています。それでは、まるで、職業みたいになってしまいますから。私たちは、常に実験でありたいと思っています。そして、様々なトピックのアイデアを集めて、さらに、話題となることをしたいですね。

—— 今回の会場はとてもよかったですよね。

デニス:そうなのです、ここ、Fylkingen(フィリキンゲン)には、200人の素晴らしい会員がいます。実験音楽がベースのスペースです。ちゃんとしたオフィスがあって、スペースがあって、倉庫があって、カフェがある。理想的です。1930年代に設立された、歴史あるライブハウスなのです。私たちはフィリキンゲンのメンバーにも参加を呼びかけました。興味があったら、出演しませんかと。そして、4人出演してくれました。
エリック:ツアー型にしたらどうか、というアイデアもあります。
デニス:ラビサも含め、3人でよく相談し、次のフェスティバルを考えたいと思います。

ラビサ Lovisa Johansson
ラビサ Lovisa Johansson

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アーティスト・ランのプロジェクト

(2) PAS (PARFORMANCE ART STUDIES)
(3) PAE (Performance Art Event)

(Index) & 山岡佐紀子プロフィール

優秀な通訳者、山岡佐紀子

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山岡佐紀子さんのソロパフォーマンスに行ってきた。彼女はパフォーマンスでいつも何かに扮する。自分自身をさらけ出すという行為ではなく、何かに扮してクールに演じる。だからこちらも作品をクールに楽しむことができる。今回、彼女が扮したのは「通訳者」だ。学校の先生あるいは図書館の事務員のような出で立ちで教卓に座り、人数限定の参加者の「手紙」を通訳する。

参加者はペアになった相手に手紙を書くが、それは必ず山岡さんの手を介し、「通訳」されてから相手に届く。手紙が書かれ、通訳された手紙が届き、それに対して返事を書く。読み終えた手紙は丸められて床に溜まっていく。繰り返される行為の時間のなかで、各人は想念と想像の世界を楽しんでいる。何が起きたのかまだ誰もわからない。拾い集められた手紙はCIAによって解析されるのだろうか? (牛之甫)

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☆山岡佐紀子ソロイベント Sakiko Solo Event

百頭バア(Hundred Heads Bar)その1『優秀な通訳者』

シャトーパフォーマンスアートマルゴー 番外

12月11日(日) 17:30~18:30

観客6人限定。完全予約制。

@小金井アートスポット シャトー2F (リザベーションルーム) http://chateau-pa-margaux.blogspot.com/

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Sakiko Yamaoka Hechima Blog>> http://hechimasoon.blogspot.com/

人気記事ベスト5

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TAEZ!この30日間の人気記事ベスト5をお知らせします。

1) ヨコトリ2011見どころ講座アーティスト編1

2) ヨコトリ2011~世界ってどこ? 山岡佐紀子が語る

3) ヨコトリ2011記者会見<その2> 日本の作家を世界に発信する

4) 金沢文庫芸術祭まるごと生中継!

5) 森で創る、森のアート。横浜の森美術展4 開催中

次点) Sparkling Days 荒神明香インタビュー

次点) 横浜にメリーゴーランド工房がオープン

Twitterフォローしてください。最新情報お届けします。>>http://twitter.com/TakeArtEazy

メリーゴーランド工房、関心が高いですね。追加取材をしなければ…。ヨコトリあと1か月です。まだの方は山岡佐紀子さんの語りを参考に。荒神明香さんミヤケマイさん曽谷朝絵さんの展覧会は19日までです。お見逃しなく。

Talking Hechima ヨコハマトリエンナーレ2011〜世界ってどこ? 山岡佐紀子が語る

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アーティスト山岡佐紀子がヨコハマトリエンナーレ2011を語る。「世界はどこまで知ることができるか?」と誰かが言う時、その世界は、どこまでを言うのだろうか?アートは、世界のすべての出来事に向かい合っているのか?そして、向かい合うことは、可能か?そもそも「すべてに」踏み込むだけの「分」が、アートに、あるのだろうか? アフリカ以外の世界各地を知っている山岡さんだからこその素直な疑問をきっかけに、展覧会コンセプトとしての、不思議、魔法、神話、アニミズムの世界という古くさいテーマに対する、パーソナルな魅力である「身体性」。コンセプトや作品紹介を横軸に、「なぜだか好きになってしまう」「なんだか気になる」という縦軸の、交差するような作品について、そしてヨコハマトリエンナーレ2011を語る。

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出演:山岡佐紀子

聞き手・写真・ディレクション:高橋 晃

撮影・編集:岩田稔夫

スタジオ技術:水鏡、長瀬 悠

制作:TAEZ!

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山岡佐紀子 Sakiko Yamaoka

札幌生まれ。アーティスト。亡命、ノマド、移民、旅人、変容をテーマに、主にサイトスペシフィックな表現を行なう。プロジェクト、パフォーマンス、介入系アクション、インスタレーション、インタビュー、イラストレーション。武蔵野美術大学油絵学科卒業後、博物館に勤務しながら、絵画の作品を発表。画廊の勤務などを経て、1991年頃パフォーマンスアートに興味を持ち、始める。作品は、以下の2つの方向性。1. サイトペシフィック(社会コンテキストと視覚的条件)を背景とした作品。2. ホワイトキューブでのファインアート系作品。公式サイト:http://sakikoyamaoka.com/

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mediActions は、連日盛りだくさんのプログラムで11月13日まで 3331にて開催中! 10月24日はパフォーマンスをUST中継

dislocate mediActions

みなさま、山岡佐紀子です。

9月26日より3331ArtsChiydaにて開催中の「メディアクションズ」http://dis-locate.net/mediactions/

も、後半になって参りました。テークノロジー、メディア、公共空間、ローカリティ、ジェンダーがテーマのイベントです。

今後の予定をお知らせします。公共哲学カフェとの共催イベントもよろしくお願いします。

ワークショップ4 B1マルチスペース

10月23日(土)14:00~18:00 映像を感覚的にコラージュする。

パフォーマンス B1マルチスペース

10月24日(土)14:00~ シェン・ジー、ジャスミン・パテラ、ピリリャ・ターニャ、山岡佐紀子

*山岡の作品は『天使の監視』というタイトル。秋葉原駅構内で行うパフォーマンスを、観客は離れたイベント会場にて「安全に」に鑑賞します。

ファイナル・ワークショップ 集合場所 B1マルチスペース

10月30日(土)14:00~18:00 『モバイル・ティーパーティ』というアクションを参加者と屋外にて共に行います。秋葉原がその発祥の地であるというリヤカーですが、

現在も段ボール集めに使われているリヤカーを1台借りて、町の「開かれた場所」を求めて、のんきに移動式お茶会を行います。是非ご参加を。

参加型イベント

10月31日(日)14:00~ 内容未定

展覧会 ギャラリーB

10月30日(土)~13日(土)12:00~20:00 ワークショップのドキュメントと、滞在中のレジデンシーアーティストが制作した作品やパフォーマンスの記録。

共催イベント

11月11日(木)18:30~21:00 ギャラリーB

公共哲学カフェ出前編「公共哲学×アート』 アートにとっての公共への期待、「公共哲学」から見たアートをディスカションします。公共哲学では、公(官)と私の2分法ではなく、その2つをを媒介する場としての新しい「公共」という開かれた場所を、実践的に作っていこうとする動きだと、山岡は理解しております。いわゆる「パブリックアート」としてではなくて、「個人の居場所でもあるはずのあるアート」はこうした動きに、どんな希望や活動を持って関わることができるでしょうか。試みてみたいと思います。

モデレーター/宮崎文彦さん (千葉大学国際教育センター特任研究員、京都フォーラム/公共哲学共働研究所共同研究員[公共哲学担当])

コーディネーター/山岡佐紀子

協力/アライ=ヒロユキさん

共催/シリーズ『公共哲学』を読む会(NPO法人準備会)」  関連URL  http://public-philosophy.net/

山岡佐紀子

http://sakikoyamaoka.com

sakikohechima : Skype, Twitter

6/20 山岡佐紀子「いっしょにやるパフォーマンス Love or Not」

Apple GINZA

山岡佐紀子

いっしょにやるアクションパフォーマンス

Love or Not

2010年6月20日(日曜)父の日

Apple Store Ginza  東京都中央区銀座3-5-12

in APPLE AND OGANGES : MEDIA CIRCUS 17:00~19:00  入場無料

(武蔵野美術大学映像学科メディアアートコース、クリストフ・シャルルゼミ主催のイベントに参加)

Ustream放送 : なないろチャンネル http://nanachan.tv/

問合せ先:山岡佐紀子 missingincitygmail.com (★>@)

http://sakikoyamaoka.com

sakikohechima : Skype, Twitter

81-(0)80-5447-9338

[山岡佐紀子さんからのお知らせです]

パフォーマンスのお知らせです。銀座のアップルストアです。クリストフ・シャルルさんの研究室主催(武蔵野美術大学)で、学生さんたちが映像、エレクトロニクス作品、演奏などを発表する中に、まじらせていただき、山岡佐紀子が行います。

わたしのパフォーマンスは、9月26日~11月6日に、3331ARTS CYD で行われるMediAction (http://dis-locate.net/mediactions/ まだ英語のページのみ) というイベントのデモンストレーションでもあります。会場では、4つのウインドウのあるUstrem画面を見ることができ、各ウインドウには、4つの都市(北京、バンドン、カルカッタ、東京)でのアーティストの様子が映る予定です。

東京ではわたしがApple前で、参加型のパフォーマンスをオーガナイズします。今回も非常に単純なアクションを行います。交差点の横断歩道に青信号のうちに出て、みんなでそれを行います。簡単です。でも、今度は寝ません。会場か家で4つの映像を楽しむか、路上で生の体験を楽しむか? たぶんやってみるのが一番!! 記録カメラ担当も同時に募集してます

2.12-17 「イスラエルの若いアーティストとの対話」展

[速報・レポート]

以下の展覧会、おかげさまで続行中です。

変更情報がありますので、お知らせさせてください。

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C&M T (大砲と美神 Cannons and Muses, Tokyo) による展覧会

「イスラエルの若いアーティストとの対話」展

2010212日(金)~17日(水) 14日(日)休み

14302000 多摩美術大学 上野毛校 演劇演習室(鏡の間)

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オープニング前の初日にも、予定外にパフォーマンスが行われ、若者エネルギーとユーモアとの連続を楽しみました。

オープニングパーティでは、阪中君による、前日の続きというパフォーマンスがありました。納得いくまで、何度も行うのだそうです。あしたもするのかな。

しかし、残念ながら、16日に予定していた「テルアビブとのリアルタイム」パフォーマンスは、テルアビブ側のインターネットセットができなくなってしまったため、中止となりました。

もちろん! 日本側会場のみでのパフォーマンスはあります。たぶん、予定時刻から始まると思います。(1900

*長尾日和さんによる、Maya Gelfmanの詩を、独自に解釈しなおしたリーディングパフォーマンス

*阪中隆文君による、Chaya Ruckenのパフォーマンスを、彼の身体と意識を借りて再現パフォーマンス

*村上裕君により、Nisreen Najarのパンを使ったインスタレーションへのオマージュパフォーマンス

*後藤天君と仲間たちによるテルアビブと日本の町の音などを使ったサウンドパフォーマンス

などなどが、予定されています。

予定どおりにはなかなかやれないのだけど(笑)、彼らはトライすることをやめません。

今時の大学では、パフォーマンスアートが普通に行われるようになったんだなあと、将来頼もしいと思っていたところ、

「おれら、相当特殊なタイプですよ。」

ぬあんだ。

良かったら、散歩がてら、激励に来てください。

山岡

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山岡佐紀子です。わたしがコーディネート、アドバイスしているC&M Tokyoの学生さんたちの企画する展覧会です。

地球の半分くらい裏側の、見ず知らずの若者たちとネットを通じて話し合い、彼らの作品を、できるだけリアルタイムに興味深く見てもらえるようにと、紹介方法を工夫しているようです。どうなることか?

とにかく、パフォーマティブな試みに満ちたものになりそうです。

御興味のある方! お時間があれば、御高覧いただけるとありがたいです。

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C&M T(大砲と美神 Cannons and Muses, Tokyo)による展覧会

「イスラエルの若いアーティストとの対話」展

http://cannonsandmusestokyo-sakikohechima.blogspot.com

2010年2月12日(金)~17日(水) 14日(日)休み

14:30~20:00 多摩美術大学 上野毛校 演劇演習室(鏡の間)

13日 16:30頃からパフォーマンス

17:00オープニングパーティ(作品の紹介のトークが各チームによって、行われます)

16日 19:00 テルアビブとのリアルタイムパフォーマンス

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C&M, Telaviv(テルアビブ)とC&M, Jerusalem(エルサレム)の若いアーティスト(学生)8名によるプレゼンテーションを、東京のメンバー10名がホスト役となり、紹介する展覧会です。紹介作品は、映像、写真、ドゥローイング、パフォーマンス、ワークショップなど。
作品は、インターネットや郵送などで送られてきます。
そして、単に作品を展示するのではなく、ほぼ1対1のチームになって、メールやSkype などでのコミュニケーションし、ゲストのアーティストの作品を、日本の観客に少しでも伝わるように、ホスト側は工夫します。
チームよって、紹介の仕方は違います。あるチームは、イスラエルのアーティストのパフォーマンス作品を再現します。
インスタレーションの再現もあります。お互いの作品のコンセプトの近い部分を意識して話し合い、展示をコラボレーションにする試みもあります。

C&M, Telaviv(テルアビブ)とC&M, Jerusalem(エルサレム)の若いアーティスト(学生)8名によるプレゼンテーションを、東京のメンバー10名がホスト役となり、紹介する展覧会です。紹介作品は、映像、写真、ドゥローイング、パフォーマンス、ワークショップなど。
作品は、インターネットや郵送などで送られてきます。そして、単に作品を展示するのではなく、ほぼ1対1のチームになって、メールやSkype などでのコミュニケーションし、ゲストのアーティストの作品を、日本の観客に少しでも伝わるように、ホスト側は工夫します。チームよって、紹介の仕方は違います。あるチームは、イスラエルのアーティストのパフォーマンス作品を再現します。インスタレーションの再現もあります。お互いの作品のコンセプトの近い部分を意識して話し合い、展示をコラボレーションにする試みもあります。

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イスラエル側ゲストメンバー

Irit Manor, Maya Elran, Chaya Ruckin, Nissreen Najar, Lior Amir Kariel, Naava Weiner, Anat Saad, Maya Gelfman

東京側ホストメンバー

後藤天、磯龍介、阪中隆文、鈴木萌、赤土翔一、村上裕、山本渉、丹下友希、畑江彩美、十河佑美

コーディネーター*Premshay Hermon+山岡佐紀子

協力*多摩美術大学映像演劇学科研究室

主催*Cannons and Muse Tokyo (代表・後藤天  映像演劇学科3年)

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大砲と美神 Cannons&Muses Tokyo サウンドライブミーティング レポート

Tokyo_1
Tokyo
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Telaviv
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good by

皆様

わたし、山岡がコーディネートしている「大砲と美神 Cannons and Muses Tokyo」http://cannons.mistysky.net/ の、以下のイベントのご報告をさせてください。

(Cannon and Muses Tokyoは、テルアビブで始まった「Cannons and Muses -Artist’s Role of Real-time Crisis」のネットワークに参加しています。http://cannonsandmuses.org/indexhibit/

御興味のある方は、以下、御高覧いただけると幸いです。

<概要>

多摩美の学生を中心にした若いアーティストたちのセルフエデュケーションプログラムの公開イベント vol.3 Sound Meeting with C&M Tel-Aviv インターネットを使ったリアルタイム・ライブ・サウンド・ミーティング

(多摩美術大学芸術祭参加)

日本側場所:多摩美術大学 演劇演習室(俗称、鏡の間)

日本側日時:2009年11月2日 19:00~20:00

2009年11月3日 15:30~16:30

日本側代表:後藤天

テルアビブ側場所:Musrara (写真とメディアアートのカレッジ)

http://www.naggarschool.com/en/

テルアビブ側日時:2009年11月2日 12:00~13:00

2009年11月3日 08:30~09:30

テルアビブ側代表:Premshay Harmon

「Justin TV」  http://www.justin.tv/ を使用し、オンラインで世界中から見ることができるようにしました。

<報告>

そして、当日のパフォーマンスですが、会場のLANの遅さ、テクニカルの技術の弱さ(双方)や、Justin TVの不安定さなどで、なかなか困難でしたが、実際は成果のあるものでした。

サウンドが芸術の域に行ったとは思えませんでしたが、とぎれとぎれにつながったり、荒い映像やまばらな音声に目をこらし、耳を傾け、関係も持とうと音や声で、様々に工夫をして、アピールした時間は、凝縮したものでした。

まさにパフォーマティブ。つながることへの希望を捨てないで、メンバー皆で、努力した時間は、緊張感がとぎれることはありませんでした。

テクニカル面やチームワークに大いに、改善すべきことがいろいろありますが、テルアビブのアーティストと「リアルタイム」に、対面するということでは、とても良いビギニングになったと思います。

先方のMusraraというカレッジは、場所を借りただけですが、カレッジ側も大変、良い企画であったと喜んでくれたと、後で聞きました。

1日目に、ご来場いただき、アドバイスをくださった足立智美さん、ありがとうございました。

以下、レポートは、コーディネーター山岡から、メンバーへの手紙の形をとっています。

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C&M Tokyo メンバーへの手紙 11月5日

終了して、2日経とうとしています。参加した方は、おつかれさまでした。

思えば、なんて、興奮した3日間だったでしょうか(1日目はリハーサルとテクニカルテスト、2~3日がパフォーマンス)。テクニカルがうまくいかなくて、苦しみましたね。特に音声が届かなかったり、とぎれとぎれであったり、爆音になってしまったり(映像は荒いながらも届いていました)。確かに、Skypeだけで行った方が、うまくつながって「音楽的な」サウンドミーティングらしきことができたかもしれません。だけど、あの3日間ほどに、緊張した時間を過ごせることができただろうか???

ルンルンに、安易な音遊びで、テクノロジーの問題を(うまく使えるかとか、そういうユーザーレベルのことではなくて)考えることもなく、携帯電話ですぐ話せるみたいな、簡単な、安楽さの中での「遊び」に終わったかもしれません。

Justin TVによって、外部の人間も見ることができる(世界中のPCから見ることができる)ツールを使う、というハードルを高くしたことにより、技術的に、大変でした。でも、そのことにより、これほど遠くの人と安易につながることは、実際は難しく、そしてそれは、とても、もどかしい。会いたくて、会いたくて、会えたときの喜び。これは、簡単につながっていては、味わえなかったと思うのです。

かつて、電話も、電車も車も、手紙もなかった時代、会いたい人には、歩いて会いに行きました。そして、どこで会えるかの保障がなく、辻に立って、何日も待っていたでしょう。あの時代の人と人のつながりを、取り戻すことはできないにしても、想像する力を持っていたいと思います。

テクニカルの後藤君と丸山君は、準備の時間から2時間(準備の時間のうち最初の40分くらいは音声テスト)、緊張を止めることなく、集中していました。残りのスタッフたちは、はらはらと、わくわくを交互に思いながら、待ちの緊張。一日目は、なんとか通じたので、だんだん、はっきりしていく先方の様子。時間のラグがあるから、どうこちらのメッセージを伝えるか、トライし続けました。結局、音のやり取りもできたし、話もできた。音声も映像も相当、荒かったけれど、それが「遠さ」を感じさせてくれて、映っている人たちが、とても「なつかし」かった。サウンドの出し方が芸術のレベルまで行っていなかったけど、まるで、慣れないトーキングドラムで、隣の村の人々へ「お~い、聞いてるかい?」と合図している感じ。

また、2日目は、サウンドも映像もつながらないまま、お客さんがどんどん入ったので、彼らと、どう過ごしたらいいのか、真剣に工夫をしましたね。丹下さんがアナウンスして、皆さんを飽きさせないようにしたり、パフォーマンスを始めたり。先方とは、映像ではつながっていたけど、音で向こうに通じているかわからないし、PCでのチャットができなかったので、スケッチブックのカンペで、先方の「サウンドの音量が高すぎる」旨伝えようとしたら、先方はなぜか楽しそうにスケッチブックで返事をしてきた。見たら、ヘブライで書いたありました。

そのずれが、面白い。

その時、カバコフとファーブルの会話を思い出しました。カバコフは、ハエの格好をしてロシア語で話し、ファーブルはコガネムシの格好でオランダ語で話す。わからないけど、わかる範囲で、反応しあい、カバコフのスタジオである建物を案内する、という内容だったと思う。友情だけは確かめていた?と言った感じ。通じ合えるのは、言語の問題でも、種の問題でもないんだという、作品だったと思いました。

2日目の後半。メンバーの沢田君が、楽器を持ったお客さん(学生さん?)をたくさん呼び集めてくれて、おかげで、スペースは音楽で盛り上がり、まるで、天の岩戸の前みたいだった。お~い、出てきてくれよ~。みんな待っているし、たとえ、あなたが今、出て来なかったとして、あなたがこの世にいてくれるのが、ありがたい。まってるよ~。というやつ。最後は、双方、全員で、投げキスや手を降って終了。

コミュニケーションとは、本来、こうなのかもしれません。通じないけど、通じるレベルで努力する、誠実さと希望を止めないこと。

たしかに、テクノロジーをうまく使えなかった悔しさが残ったけれど、なんだか、妙に、充実感があったので、それを、よく考えたら、以上のようなことを、発見しました。

「事故の博物館」という言葉があるけど、まさに。ヴィリリオだったけ。藤幡さんの本でも読みました。クライシスの時こそ、何ができるか、人々は真剣になり、何が大事か、選び取る時なのです。

もうひとつ、思ったのは、デジタルでは音は「大きい」と「小さい」だけです。でも、PAのない時代は、かつては、音は「遠い」と「近い」だけだった。アナログのステレオでは、音をしぼると、機材に負担がかかっていたと聞きます。

もちろん、それとは構造が違うけど、「遠い」音の体験でした。経験しようと思ってできることではありません。

次回のこういう時には、段取りやチームワークなどをスキルアップしていると思うけど、また、ハードルの高いことを目指しましょう。わたしたちは、芸人ではなくて、アーティストです。しかも、セルフエデュケーションという場所なのだから、トライすることが、一番大事だと思います。

わたしも、物事の、基本の大事なことを忘れて、うまくいくかどうかにこだわり、あやうく、足をすくわれそうになっていました。気がつかせてくれてありがとう。

テルアビブ側からの次のアクションの提案がもう来ています。

山岡佐紀子