「アーティスト・ランのプロジェクト」山岡佐紀子によるインタビュー (2) PAS

Kirsten Heshusius
Kirsten Heshusius photo by Monika Sobczak

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pas

PAS (パフォーマンス・アート・スタディズ)
http://pas.bbbjohannesdeimling.de/

 パフォーマンス・アート・スタディズについては、数年前からその存在は知っていた。主催者のヨハネスのことも、その少し前から知っていた。今回は、私が参加した2つのアートイベントのどちらにも、PASは教育活動として、参加していた。ストックホルムでは、ヨハネスがレクチャーをするだけだったが、ロッテルダムでは、10日間のフル・プロジェクトが開催され、その中で、私もちょっとだけ、レクチャーを承った。
パフォーマンスアートは教えられないだろうと、よく言われる。素人でも、ぱっとやれる分野だと思われている。それは大きな誤解なのだ。身体の訓練ではなく、アイデアと実践の勉強はやはり、必要なのだ。欧米では、アートスクールのクラスの中で、パフォーマンスアートの勉強をする時間を設けているところは少なくない。しかも、ヨハネスは、学校ではなく、出前式の「ティーチングというパフォーマンス」の実践している。つまり、私たち日本の状況の何歩も先を行っているのでは?
PASでは、主催者のヨハネス・ディームリング(BBB Johannes Deimling)の他に、アシスタント講師として、マルセル・スパーマン(Marcel Sparmann)、その他に、写真家が2人。この4人のチームが全員揃って、PASは成立する。4人のうち、3人がドイツ人、写真家の一人はポーランド人である。

インタビューは、2012年5月7日、ロッテルダムでの、PASのプログラムの最中の昼休み、近くのカフェにて、ヨハネスとマルセルの2人に、行なった。

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BBB Johaness Deimling
BBB Johanness Deimling

—— パフォーマンス・アート・スタディズとはどういうものですか。

ヨハネス: PASは、2008年に設立しました。それ以前の15年間、私は、様々な形でパフォーマンスアートを教えるということをしてきました。美術アカデミーや学校、大学などです。そして、それを通して、そして、教えることをパフォーマンスとして、発展させられると考えるようになりました。教えることで必要とされる、空間と時間とプロセスは、パフォーマンスアートを創るためのツールと同じです。ティーチングパフォーマンスは、なにより自由なスタイルをとりたいと思いました。研究室はおろか、オフィスすらありません。ここでも、私たちは、アーティストであり、同時に、教師で、ディレクターで、かつオーガナイザーなのです。これは、学校のプロジェクトではなく、アートプロジェクトです。アートの学生だけでなく、一般の生徒も教えます。教えるプロジェクトですが、いわゆる「エデュケーション」ではないのです。また「ワークショップ」という言葉は全く不十分です。これは、生徒にとっても私たちにとっても「研究」なので、むしろ、「ペダゴティック(教育学)」と言っても、良いかと思っています。たぶん、「アイ・オープナー」という言葉が一番、合うかもしれません。つまり、パフォーマンスはパフォーマンス。あなたはあなただし、私は私です。しかし、ある時、目を開けば、それは、何かである、というような発見をする。そのための研究と創造の経験です。
ここでは、様々なことをします。アートだけでなく、解剖学や美学、デザイン、写真についても、教えます。パフォーマンスアートに必要なことは、そのメソッドから始まり、あらゆる角度から、創造性ということを学ぶことができます。そのためには、最低でも10日間は必要です。しかも、日程ごとの予定は予め、決めません。参加している生徒たちに、ふさわしいことをするために、その日その日のディスカッションを通して、翌日にすることを決めます。パフォーマンスである以上、そのような自由さが大事なのです。

Nina Wijnmaalen
Nina Wijnmaalen photo by Monika Sobczak

——— 美術系でない生徒にも教えるということですが、このプロジェクトに参加することが、彼等の将来や現在の生活にどんな役に立つと思いますか?

ヨハネス:パフォーマンスをつくるプロセスは、生きている中での問題を解決するプロセスに、適応しています。精神的な問題ではなくて、もっと基本的な問題です。どうやって生き延びるかとか、どう朝起きるかとか。彫刻や写真と違う点は、たとえば、パフォーマンスアートで見つけた方策は、生活の中で使うことができます。状況や形式が、ある意味、生活の状況と似ているのです。

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Marcel Sparmann
Marcel Sparmann

マルセル:私たちは、パフォーマンスアートだけを教えているわけではありません。創造性ということを教えています。まず、どうやって、そのプロセスを始めるか。そして、それは、個人的なプロセスをどう始めるかと同じなのです。2ヶ月ほどまえに、行なった10代向けのプロジェクトでは、13歳から19歳までの生徒たちが集まりました。アナという13歳の子は、ウクライナ出身で、最初、特に何かを話す子供ではありませんでした。ところが、最後のプレゼンテーションが近づくと、突然、彼女は彼女の個人的なことを話し始めたのです。彼女のバックグラウンド、ウクライナからドイツに来たこと、違った文化の中でどう生きているか、などを。そして最終的に彼女はすばらしいパフォーマンスをつくりました。「シフト」というタイトルで、自分が変わるプロセスを作品にしました。気に入ったイメージをそこへ持ってきて、自分に適応させ、再創造し、そして最後にはそのイメージを自分自身のものにしました。

—— それは、もちろん、セラピーではないのですね。

ヨハネス: 全く、違います。セラピーは、誰かが誰かの個人的な問題を解決するためのものですが、パフォーマンスアートでは、それを具体的に解決するわけではありません。私たちは、ソシャルワーカーでも、精神科医でもなく、アーティストです。私たちは、トピックを開く方法、つまり、人が気のつかない部屋の隅にあるようなこと、一般の人はざっとそこを表面的に見るけれども、私達は違う角度から見るということを促します。なぜなら、私たちの方法は「研究(studies)」だからです。たとえば人は、人生で何をしたらいいか判らなくなった時、葛藤しますね。その葛藤は、オリエンテーションであり、美であり、存在の証明そのものなのです。人は、道に迷う。パフォーマンスは、どのような「構造」を、個人的な人生に持たせたらいいかを、考えさせてくれます。

photo by Sakiko Yamaoka

マルセル:たぶん、それは、新しい言語を学ぶようなことだと言うことができます。たとえば、私が日本語を学ぶとします。勉強しなくてはならないし、本や辞書が必要です。勉強すれば、話したり、書いたりできるようになります。そして、翻訳方法、質問、感じ方の表現方法を学んで、自分自身を表現するのに、使うことができるようになります。自分がしようとしていることのイメージを表現する方法を増やしてゆけば、それは一種の辞書になってゆきます。それを使い、見つけたことや経験を話し、話題、質問などを話すようになれます。それは他の言語、アートという言語を使って、コミュニケーションができるようになるということです。そして、個人的なアプローチがスタート地点です。実のところ、内面では、たくさんの人が、同じ問題をかかえています。その言語によって、どのように何かをみつることができるでしょうか。それは、自分だけのためではなく、他の人のためでもあることがまた重要です。私もここで学んでいます。

—— ここでは、作品をつくり、パブリック化するというゴールがありますね。

マルセル:このプロジェクトでは、最後にプレゼンテーションをすることを重視しています。プロセスは、教育的かもしれませんが、私たちは、アーティスティックな展開を期待しています。ですから、最終的には、展覧会やパフォーマンスイベントを必ず行ないます。インビテーションカードやポスターをつくり、キュレーターや観客を呼びます。アーティストが作品を発表することと同じなのです。私たちは、生徒たちが作品を制作するための、ファシリテーターと言っても良いでしょう。今回のように、他のフェスティバルやアートイベントと共催することはよくありますが、両方のために、有益な方法だと思います。

photo by Sakiko Yamaoka

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アーティスト・ランのプロジェクト
(1) PALS (performance art links)
(3) PAE (Performance Art Event)
(Index) & 山岡佐紀子プロフィール

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