「ちぐさアーカイブプロジェクト展」がはじまります。 横浜市民放送局では10月8日から17日まで、 再現された「ちぐさ」から生中継します。
僕の「ちぐさ」は40年前だ。かもめ座の近くにあった美術研究所に通っていた画学生は、毎日野毛を徘徊していた。遊んでいた訳ではないのでもっぱら空腹を満たし仲間と「論議」するために、レストランや喫茶店を巡っていた。小西やセンターグリルをはじめ洋食屋には事欠かない町だった。「ミルクホール」のような古い喫茶店もけっこうあった。「ちぐさ」の赤い屋根はだからほとんど毎日見て過ごしたが、実はあんまり行ってない。たしか当時はスクール椅子のような小さなテーブルがついた一人用の木の椅子に座らせられて、客はスピーカーに向かって神妙にレコードを聴いていた。学校を抜けて来ているのに学校のような雰囲気はごめんだった。ロック喫茶が横浜にまだなかったから、音を聞きたいときはそれでもたまに行った。そのうち、ブリジットフォンテーヌなんかを気楽に聞かせてくれる日ノ出町の「ファースト」の常連になったが、今でも界隈で営業している「リンデン」「ダウンビート」とともに、「ちぐさ」にも時々回って歩いた。窓が広く明るい店内で真面目に音楽に対峙するというストイックな空間度は、東京のいくつかの似たような店に比べても第一級だったと思う。そんな「ちぐさ」で、亡くなった僕の友人でバイク野郎の不良の権化みたいな男が、若い頃レコードを廻していたと聞いたとき、その男とちぐさをオーバーラップさせてみて、ちぐさの「神聖さ」をはじめて感じた。本物の家具や什器、オーディオで再現される「ちぐさ」に出会うのは実はすごい楽しみだ。(牛之甫)
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「ちぐさ」アーカイブプロジェクト 『野毛にちぐさがあった!』
2010年10月8日(金)~10月17日(日) 10日間
11:00~19:00
会場:野毛Hana*Hanaフリースペース A〜C
入場料:500円(ドリンク付き)
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◎展示
店舗を実物大で再現。当時の家具やレコードなどをそのまま配置して同時のJazz喫茶ちぐさの再現を試みる。
展示室では写真、書簡、レコードジャケット、年表などを展示。
◎トークイベント(各日とも16:00~17:00)
10月9日(土)瀬川昌久(ジャズ評論家)・高田達也(文筆家)
10月10日(日)ちぐさ会メンバー(安藤和正、岩井伸平、金重正臣、気賀沢忠文、鈴木房一、高橋信男、田村正宏、中元睦雄、日高一義、皆川龍三、遊佐正孝)
10月17日(日)五十嵐明要(ミュージシャン)・柴田浩一(Jazzプロムナード・プロデューサー)
◎生中継
会期中毎日夕方頃、会場の様子を生中継します。 思いがけないゲストのインタビューがあるかもしれません。ちぐさの思い出を語りたい方、特設スタジオまたは、カメラを持って動き回っているスタッフに声をかけてください。
放送は、野毛Hana*Hana TVと横浜市民放送局のコラボレーションでお送りします。>>http://c-tv.jp(横浜市民放送局)
ちぐさ復活作業、前日の様子。(取材YCMB)>> http://am6.jp/bEVU9z
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