2011年8月5日(金曜日)「ヨコハマトリエンナーレ2011」記者会見が、横浜美術館にて14:00~15:00 行われた。関係者、登壇者のコメントから、本展開催への特別な思いや喜びが伝わってきた。
同日、内覧会とレセプションも開催され、プレス関係者、招待客など多くの方で各会場はにぎわった。
【総合ディレクター 横浜美術館館長 逢坂 恵理子氏】
震災後の厳しい時期であったが、多くのアーティストに素晴らしい作品を出品して頂くとともに、多くのスタッフが「ヨコハマトリエンナーレ2011」の実現に向け尽力し、本展の開催ができた。感無量である。
展覧会タイトル「OUR MAGIC HOUR-世界はどこまで知ることができるか?-」は、この時期にふさわしいタイトルになったのではないか?
私達人間の力では掌握できないような世界の奥深さを前にして、謙虚な気持ちで世界に対して何ができるか? 人間として何ができるか? 国際展である本展を通して感じとってほしい。
横浜美術館のコレクションである近代絵画や浮世絵など歴史的な作品、妖怪グッズなど制作年代・素材の異なる多種多様な作品を展示している。屋内外77組のアーティストが参加、作品総計300点以上となった。
自由に創造力を働かせて、なぜ、この作品の横にこの作品があるのだろう?と考えつつ、独自の展覧会のストーリーを紡ぎ出してほしい。
東日本大震災後、ジュン・グエン=ハシツバ氏、オノ・ヨーコ氏、安部泰輔氏、島袋道浩氏、岩崎貴宏氏、荒木経惟氏をはじめとする 多くのアーティストによる新たなプランの提示があった。作品を通してメッセージを伝えたいという熱い思いが込められている。
荒木氏の《被災花》という作品は、震災により家を無くし避難所で過ごすおばあちゃんと孫娘に捧げる花である。
【クリスチャン・マークレー氏 / Christian MARCLAY 1955年 カルフォル二ア州サンラファエル(アメリカ)生まれ】
1987年から来日しているが、2011年に日本で起きたことを考えると、特別なときに日本を訪問しているという感慨深い思いがある。
【イン・シウジェン氏 / YIN Xiuzhen 1963年 北京(中国)生まれ】
本展を通して、多くのアーティスト・作品に出会えることを楽しみにしている。
本展は、様々な異なる認識が集まっているが、世界を知れば知るほど、世界の認識が欠けていることを私達は認識するのではないか?
会場で、「MAGIC HOUR」をみなさまが経験することに感謝している。
【田中 功起氏 / TANAKA Koki 1975年 栃木生まれ、ロサンゼルス在住】
本展は、日本人作家が多く複数のジェネレーションが絡み合っている。
自らの活動を信じてきた粘り強い日本人アーティスト達が、本展に参加していることが従来の展覧会との違いである。
震災と原発事故の後で、僕たち一人一人が別な意見をもち、立ち上がらなければならない今の日本の現状は、現代美術にも当てはまり、自らの立場をもう一度見直すべきである。本展は、このことについて考えるためのヒントが十分提示され、そこに希望を見いだすことができる。展覧会を楽しんで欲しい。
【質疑応答】
Q: なぜ、この作品名を《タイム・ウオッチ》でなく、《CLOCK》とつけたのか?
A(クリスチャンマークレー氏): 作品名・タイトルは2次元的なもの。CLOCK は、パブリックな意味があり、TIME ・時間というと、一般的すぎるため。
Q : 作品の夜の時間帯は、いつ鑑賞できるのでしょうか?
A(クリスチャンマークレー氏): 各地とも、会期中に特別上映として1日のみ24時間上映されてきたが、現在は東日本大震災の後ということもあり、節電対策がとられ未定である。
A(逢坂 恵理子氏):会期中、10月以降、夜及び早朝に本作品を上映できればと考えている。ご期待ください。
Q : メイン会場に横浜美術館が選ばれたプロセスについて教えてほしい。
A (逢坂 恵理子氏) : 2009年、4月に横浜市としては、第4回ヨコハマトリエンナーレを横浜美術館を会場にして行いたいという意向があった。過去の横浜トリエンナーレの会場が毎回異なっていたので、会場のイメージを固定化する横浜市の意向に賛同した。
Q :横浜美術館の所蔵作品のコレクションを展示する手法が、本展の大きな特徴であるが、こういった展示手法が本展にどのようなインパクトをもたらしたか?
A (三木あき子氏): 横浜美術館は現代美術を専門にしている美術館ではない。多くの国際展では、新しい発見・旬のアーティスト達・新作にこだわる傾向があるが、いま一度新しさとは何か?を問い直してみたかった。美術館所蔵コレクション作品と現代美術作品を組み合わせて展示することにより、年代ものの名画が新しさを増し、新しい解釈が生まれるのではないか? との考えをベースに、現代美術作品はじめ異なるジャンルの作品・妖怪グッズをいれた形にした。
Q:国際交流基金が抜け、主催者に枠組も変更になった。5月26日の記者会見で、林市長がナショナルプロジェクトとしての継続性を意識したいと述べられたが、ナショナルプロジェクトとしての意識を展覧会に関わる方達が持っていたのか? 具体的な計画等教えてください。
A (逢坂 恵理子氏) : 今回は、本当の意味で本展にとって分岐点になったと思う。新しい視点・海外の方に日本の作家を紹介することを軸とした展覧会構成である。国際的な視点・ナショナルプロジェクトということよりも、ヨコハマトリエンナーレを通して、「日本」を多くの人に知ってもらいたい、海外の優れた作品を国内外の方々に知って頂きたい、そのことを継続して考えていきたい。
A (三木あき子氏) : 本展開催にあたり。国際性を問い直してみたい考えがあった。 国際展の方向性として、海外の作家を紹介するだけでなく、日本の作家も海外に発信する必要性を感じ、前回と比較すると多くの日本人作家の方にご参加頂いた。
<【感想】記者会見&内覧会に参加! 「ヨコハマトリエンナーレ2011」に思うこと>
まちにまった「ヨコハマトリエンナーレ2011」がスタートした。
聞こえてきそうな生命の鼓動、思わず笑みがこぼれる巧妙な仕掛け、 未来への大いなる希望 ・夢あふれる遊び心満載の空間、はかない瞬間の視覚化、テクニックを駆使しての挑戦 - 数々の素晴らしい作品に胸を踊らせときめきくとともに、その素晴らしさ故に時に絶句し、感嘆した。
来場者には、アーティスト魂かけて制作された作品に込められた作家達の思いを感じ、展示構成に着目しながら、ぜひ、ひとつひとつの作品をじっくりと鑑賞してほしいと切に願う。
東日本大震災と原発事故という二重のカタストロフィー(大災害)は、私達がそれまでもっていた価値観や人生観・世界観を変えた。このカタストロフィーは、私達にあらためて自己の存在の意味を問い、世界・時間との関わり、生と死について考えさせ、かつて人間文化の起源が自然との歩みから生まれた「無」の世界の内にあったこと、そしてそれは、芸術の原点であり芸術の根源的本質であることに気づかせた。
このことは、本展が私達に投げかける根底の問いに結びつくとともに、作品を読み解くことにつながるといえよう。
また、本展に横浜美術館収蔵作品を取り入れた試みにも着目したい。本展に来場する人々が芸術における財産ともいうべき、有名作家の優れた作品に触れる絶好の機会であるとともに、収蔵作品に新たな解釈や視点を盛り込み見解の多様化を示唆したと云え、その意義はとても大きい。今後の横浜美術館のコレクションの収集、収蔵作品の研究・学術的調査にも大きく影響を及ぼすであろう。
本展をどのようにアーカイブしていくのか? 横浜美術館コレクションに本展作品が加わることがあるのか? 本展終了後の動向にも着目するとともに、期待したい。
「ヨコハマトリエンナーレ2011 」11月6日まで開催!
期間中行われる講演会・イベント・連携プログラムにも、ぜひ、参加して本展を思う存分楽しみたい。
レポート・写真; チャーミー(梶原 千春)
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【「ヨコハマトリエンナーレ2011」記者会見】
2011年8月5日(金曜日) 14:00~15:00
横浜美術館 (神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1)
【「ヨコハマトリエンナーレ2011」内覧会】
2011年8月5日(金曜日) 13:00~18:00
会場:横浜美術館、日本郵船海岸通倉庫、ヨコハマ創造都市センター
【「ヨコハマトリエンナーレ2011」概要】
タイトル:「ヨコハマトリエンナーレ2011
OUR MAGIC HOUR -世界はどこまで知ることができるか?-」
総合ディレクター:横浜美術館館長 逢坂 恵理子
アーティスティック・ディレクター:三木 あき子
会期:2011年8月6日(土)~11月6日(日)
(休館日:8月、9月の毎週木曜日、10月13日(木)、10月27日(木))
会場:横浜美術館、日本郵船海岸通倉庫(BankART Studio NYK)、
その他周辺地域
開館時間:11:00~18:00 (入場は17:30)
主催:横浜市・NHK・朝日新聞社・横浜トリエンナーレ組織委員会
特別連携プログラム:BankART LIFE Ⅲ(新港ピア)、
黄金町バザール2011(黄金町エリア)
前売券発売期間:2011年6月1日(水)~8月5日(金)
全国のプレイガイド、コンビニエンスストアで発売中
入場料:<お得なセット券>特別連携セット券
・前売券 一般 1,400円 大学・専門学校生 900円 高校生 400円
・当日券 一般 1,800円 大学・専門学校生 1,200円 高校生 700円
<ヨコハマトリエンナーレ2011>
・前売券 一般 1,200円 大学・専門学校生 700円 高校生 300円
・当日券 一般 1,600円 大学・専門学校生 1,000円 高校生 600円
【関連サイト】
「ヨコハマトリエンナーレ公式サイト」