「ヨコハマトリエンナーレ2011」第3回記者会見[3] 多種多様な作品が創りだす、意外な「遭遇・出会い」

「ヨコハマトリエンナーレ2011」アーティステック・ディレクターの三木あき子氏より、展覧会の特徴ポイントと一部の参加作家とその作品についての紹介があった。

【展覧会について】

展覧会には、円・サイクル・見えるもの・見えないもの・儀式・錬金術・奇妙な風景、といろいろなキーワードが見受けられる。震災後は、生と死・鎮魂・祈りへの関わりが深まった作品が出展される傾向となった。  

【参加作家】

ウーゴ・ロンディノーネ /Ugo RONDINONE 1964年 ブルンネン(スイス)生まれ。ニューヨーク在住。

幻想的且つムーディな風景を作り出す手法で知られる作家である。1月・2月と月を表したアニミズム的・シンボロイズムな巨大なマスクのような彫刻郡12体12ヶ月で構成された作品《moonrise.east.》を横浜美術館の屋外の現実的空間から横浜美術館に向かう形で展示する。

ヨコハマトリエンナーレ2011の初回チラシに掲載の作品《moonrise.east.marchi》は3月をイメージした作品である。展覧会タイトル作品《Our Magic Hour》は、横浜美術館の屋上に設置予定である。

シガリット・ランダウ/Sigalit LANDAU 1969年 エルサレム(イスラエル)生まれ。テルアビブ在住。 

今年の第54回ヴェネツィア ビエンナーレ イスラエル館代表である。しばしば自分の身体を用いて痛みを伴う歴史・記憶に言及しつつ人間の存在を問うような作品を発表している。塩分の多い死海で行ったパフォーマンス映像と彫刻のインスタレーションを展示する。

マッシモ・バルトリーニ/Massimo BARTOLINI 1962年 チェーチナ(イタリア)生まれ。同在住。

特定の環境をつくり出す作品をつくる作家。工事現場の足場で組まれるパイプを用い、近づくと、パイプオルガンのような音が聴こえてくるような作品。工場現場と教会と美術館がミックスされたような不思議な空間をかもしだす。

クリスチャン・マークレー/Christian MARCLAY 1955年 カリフォルニア州サンラファエル(アメリカ)生まれ。 ロンドン、ニューヨーク在住。

CDを床にひきつめたりと音楽関連の作品で有名な作家。今回出展される大作《The Clock》は第54回ヴェネツィアビエンナーレで「金獅子賞 最高優秀作家賞」を受賞。莫大な数の古今東西の映画から時間を示すシーンを集めてそれをつなぎあわせた24時間の作品である。展覧会期間中、横浜の時間に合わせた上映で時計としても機能する。記者会見では、本人からのビデオメッセージが公開された。

ジュン・グエン=ハツシバ/   Jun NGUYEN-HATSUSHIBA 1968年 東京都生まれ。ホーチミン(ベトナム)在住。

Jun NGUYEN-HATSUSHIBA 《Breathing is Free: JAPAN, Hopes & Recovery 2011   Photo:NguyenTuan Dat / Nguyen Ton Hung Truong Courtesy the artist and Mizuma Art Gallery                            

街を走りながら、地球のドローイングを描くプロジェクトを展開している。これは、移動をしいられる難民の人々の痛みを身体で図ろうとするコンセプトから生まれ、走る道筋で絵を描き、街の異なる見え方も提示した作品である。当初、8月6日からヨコハマトリエンナーレがスタートすることをふまえて、菊の花の形を描き広島へのメモリアルにしたいとしていた。東日本大震災後、いてもたってもいられなくなり、ホーチミンを走りはじめるとともに、ホーチミンで走って描いた桜の形と横浜のサポーター達が走って描いた桜の姿を合体する形に作品《Breathing is free》の内容を変更した。震災で被災した人々が、日本のみんなが元気をとりもどせるようにヨコハマトリエンナーレで花を咲かせる。

製作過程はFacebookでチェックできる。記者会見では、本人からのビデオメッセージが公開された。

田中 功起/TANAKA Koki 1975年 栃木県生まれ。ロサンゼルス在住。

日常の素材を用いて世界の構造・多様を独自の視点で探ろうとするプロジェクト、インスタレーションで知られる作家。今回、美術館内の展示台・いす・机などを使いそれらをどのように組み合わせて展示するのか、美術館に異なる視点を提示するスタンスも面白い。

ジェイムス・リー・バイヤース/James Lee BYARS 1932-1997年 ミシガン州デトロイト(アメリカ)生まれ。カイロにて没。

97年に亡くなった作家。作品の中に一瞬で消えてしまうような「はかなげな機能」をもち、近年再評価がすすむ。今回、《Five Points Make a Man》5つの点が人間をつくるというタイトルに基づいたパフォーマンス・インスタレーションを展示。このパフォーマンスは全てどのようにやるか決められていたが、作家は実際のパフォーマンスを見ることなく亡くなった。

N.S.ハルシャ/N.S.Harsha 1969年 マイソール(インド)生まれ。同在住。

2008年第3回アルテス・ムンディ大賞を受賞。グローバル化に伴う社会・政治的課題・環境問題などの現代テーマを色彩豊かで繊細なイメージの中で扱う。今回、横浜美術館館内のカフェ内に食べること、食に関連する作品を発表。食を分け合う・与えあう・一緒に食べる、そういったものに関係する何かマジカルな瞬間を提示していく。

ヘンリック・ホーカンソン/Henrik HÅKANSSON 1968年 ヘルシンボリ(スウェーデン)生まれ。 フォルケンベルグ、ベルリン在住。

カエルや鳥などの生態を記録したり、植物などの自然を展示空間に持ち込む作家で知られる。世界は人間の視点から理解するのが大事なのではなく、他の植物や静物から見る視点を捉える試みで知られる。樹木・植物の生命力に注目した木を使ったインスタレーション作品を展示予定。

孫遜(スン・シュン)/SUN Xun 1980年 遼寧省阜新(中国)生まれ。北京在住。

横浜で滞在制作もしたことのある中国を代表する若手作家。常に社会の変化を問い続けるような作品で知られる。ヴェツィア ビエンナーレにも出展された大作《21G》を出展。5年の歳月をかけて、1万点以上のハンドローイングをつなぎあわせたインスタレーションで横浜美術館のコレクションと組み合わせた形で展示される。《21G》は、人間が死んだとき魂の重さ21gだけ体重が軽くなることをあらわす。

リヴァーネ・ノイエンシュワンダー/   Rivane NEUENSCHWANDER 1967年 ベロ・オリゾンテ(ブラジル)生まれ。同在住。

普段、我々が見逃しているもの、言葉にならないコミュニケーション・物事の余韻を視覚化したり音にしたりする作品で知られている。黒いタイルの上にベビーパウダーを撒いて掃くことにより虹模様を描いたり、虹の凸凹を浮き彫りにし、視点を変えれば世界は違って見える、変わって見えることを示す。

今回は新作と《O inquilino/The Tenant》の映像作品を展示予定。

カールステン・ニコライ/Carsten NICOLAI 1965年 カール・マルクス・シュタット(ドイツ)生まれ。 ベルリン、ケムニッツ在住。

Carsten NICOLAI 《autoR》 2010 ! Photo: René Zieger ! Courtesy Galerie EIGEN + ART, Leipzig/Berlin and The Pace Gallery

マルチメディア作品で知られる作家。横浜美術館前の建設中の施設の工事の囲い壁に鑑賞者が幾何学模様のパーツを自由に組み合わせ、作家のコントロールを超えて増殖していくイメージ・混沌とした表裏一体化の表現を狙う。屋外と日本郵船海岸通倉庫(Bank  ART  Studio NYK) の中に作品展示予定。

杉本 博司/SUGIMOTO Hiroshi 1948年 東京都生まれ。ニューヨーク在住。

日本を代表とする写真作家。仏像・化石・造形物・劇場など悠久的時間の中で作り上げた造形美術を集めて独自の視点と美意識で再構築した作品を発表し、国際展出展作家として評価が高い。今回、本人の写真と他を建築的に組み合わせた構成で、鑑賞者に新たな視点を提案している。

デワール & ジッケル/DEWAR & GICQUEL ダニエル・デワール:1976年 フォレスト・ディーン(イギリス)生まれ。パリ在住。 グレゴリー・ジッケル:1975年 サン=ブリユー(フランス)生まれ。パリ在住。

Dewar & Gicquel《Otter and Trout》 Private collection, Paris, France View of the exhibition Dewar &Gicquel, FRAC Basse Normandie, Caen, 2007 Photo Marc Domage COURTESY GALERIE LOEVENBRUCK, PARIS

古代から現代に至る様々な神話・ポピュラーなイメージを異種混同させて、動物彫刻的な作品を製作する作家。人間が本来持つ原始的なエネルギーを作品で表現したい、と現地フランスでインスタレーションを制作中。横浜美術館と日本郵船海岸通倉庫(Bank ART Studio NYK)に展示予定。

イェッペ・ハイン/Jeppe HEIN 1974年 コペンハーゲン(デンマーク)生まれ。 コペンハーゲン、ベルリン在住。

Jeppe HEIN《Smoking Bench》 2002 Installation view at ARoS, Denmark, 2009 Photo by Ole Hein Pedersen Courtesy: Johann König, Berlin, 303 Gallery, New York and SCAI THE BATHHOUSE, Tokyo

観客との関係を生み出すユーモアあふれる作品で知られる。金沢21世紀美術館で個展を開催中。会場で鑑賞者に体験してもらう参加体験型作品を展示予定。「震災後のこの大変な時期に、一瞬でも苦しいことを忘れてくれたり楽しんでもらったり、ちがうことを考えてくれたら嬉しい。」と作品に思いを込める。

前田 征紀/MAEDA Yukinori 1971年 日本生まれ。日本在住。

光・空間・宇宙などをテーマに取り扱いしている作家。今回は新作を発表する。

ミルチャ・カントル/Mircea CANTOR 1977年 ルーマニア生まれ。地球在住。

物理的・心理的動揺を引き起こすような作品で知られる作家。女性が延々と床を掃き続けるハピネスな《Tracking Happiness》はじめ、いくつかの作品を展示。作品を通じて、コンピューター社会における情報・そうした状況を身体的に理解しようと試みる。

野口 里佳/NOGUCHI Rika 1971年 埼玉県生まれ。ベルリン在住。

独特の距離感・空気感が漂よう数多くの写真を撮影している。今回は新作を発表する。

アピチャッポン・ウィーラセタクン/   Apichatpong WEERASETHAKUL 1970年 バンコク(タイ)生まれ。チェンマイ、バンコク在住。

『ブンミおじさんの森』でカンヌ映画祭パルムドール受賞。《PRIMITIVE》プロジェクトの中からインスタレーションを出品。

荒木 経惟/ARAKI Nobuyoshi 1940年 東京都生まれ。同在住。

都市風景・花の描写・エロスを浮き彫りにする作品で知られる。「死と生」「円転界」「Magic Hour」「花を捧げる」といった幾つかのキーワードを柱に展示。

トビアス・レーベルガー/Tobias REHBERGER 1966年 エスリンゲン(ドイツ)生まれ。フランクフルト在住。

ポップでカラフルなインテリアデザイン的作品・映画や光に言及した多様な作品で知られる。ランプの光が遠隔地の知らない場所で人の動きで点灯し、誰もがもつある種の無意識を視覚化するような作品を展示する。

蔡佳葳 (ツァイ・チャウエイ)/TSAI Charwei 1980年 台湾生まれ。パリ、ニューヨーク、台北在住。

豆腐・タコ・きのこなどにお経を書き続けるパフォーマンス映像で知られる。文明と自然の関係から、環境と歴史のはかなさを問いかけるとともに、そこに在るマジカルな瞬間を浮き彫りにする。

今村 遼佑/IMAMURA Ryosuke 1982年 京都府生まれ。同在住。

一見何もないギャラリー空間が作品である。そこで行われた様々のイベントの中でおきたささやかな出来事やそこにあった空間を「記憶」として思い出させ、空間と人間の五感の関係から生まれつむぎだすものを感じさせる。

マイク・ケリー/Mike KELLEY 1954年 デトロイト(アメリカ)生まれ。ロサンゼルス在住。

オカルトなどで知られる著名なアメリカの作家。スーパーマンなどにでてくる架空都市をはじめとした誰もが知っているストーリーの舞台でありながら、多様性を極める町中を立体的に再現する《Kandor City》を展示する。

ダミアン・ハースト/Damien HIRST 1965年 ブリストル(イギリス)生まれ。デヴォン在住。

アート界にセンセーションを巻き起こす作家。作品には科学と宗教のアイデオロギーがしばしば用いられる。今回は、バタフライペインティングと呼ばれる何千もの教会のステンドグラスを模した蝶の羽が曼荼羅のようなパターンを描いた作品を数点展示する。

薄久保 香/USUKUBO Kaoru 1981年 栃木県生まれ。東京都在住。

一見リアルだが、どこか夢のような幻影の作品を発表している。虚構と現実空間の曖昧さに着目し、現代のリアリティの問題を共有している作品である。

ONO Yoko Courtesy of Yoko Ono

                                                    

オノ・ヨーコ/ONO Yoko 1933年 東京都生まれ。ニューヨーク在住。

今年、第8回ヒロシマ賞受賞。当初、広島に関するシンボリズムな作品を展示予定であったが、「こういうときだからこそ、できるかぎりのことをやりたい。」と東日本大震災後のシンボリズムを表現するような新しいインスタレーション作品を出展することとなった。                                                                             

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                

ライアン・ガンダー/Ryan GANDER 1976年 チェスター(イギリス)生まれ。ロンドン在住。

非常に幅広い作品をつくるイギリスの作家。球に関連した2つの異なる作品を展示予定。

湯本豪一コレクション/   YUMOTO Goichi Collection

日本最大といえる妖怪コレクター。今回は歴史的絵巻から現代のパチンコ台までの一部を紹介する。時代を超えて人々を魅了し続け、現代に脈々と引き継がれきた妖怪文化の謎とその不思議な存在にせまる。

ピーター・コフィン/Peter COFFIN 1972年 カリフォルニア州バークレー(アメリカ)生まれ。 ニューヨーク在住。

公的には認められていない世界中にあるミクロネーションを紹介するようなプロジェクトを展開したり、UFOまがいの物体を飛ばすことでUFOそのものを社会的見地から分析することで知られる。植物の育成には音楽を聴かせることが有効であるのかを試す作品《Unititled (Greenhouse) 》を横浜創造都市センター(YCC)に展示する。これは、ミュージシャンが実際にライブ形式で音楽を聴かせるが、あくまでも、人に聴いてもらうのではなく植物に聴いてもらうためのコンサートである。                                                                                            

【作家発表!「ヨコハマトリエンナーレ2011」開催について思うこと】

東日本大震災で多くの命・建造物・文化・自然が失われた。経済・社会・生活への影響も色濃くなお残る。このような状況下で、私達は必然と人と自然の関係性や生き方・価値観・科学技術の発展の恩恵とそれに反した危険性について、あらためて考えさせられた。この経験は、全人間的ヴィジョンをもちながら本展の作品をより深く「視る」ことにつながるとともに、本当の世界観や人間文化の根源にあるアニミズムの心性への理解となるのではないか?

そういった意味からも、「ヨコハマトリエンナーレ2011」は、今の私達に必要なことが詰まった、まさに、タイムリーな展覧会であると言えるだろう。

「OUR MAGIC HOUR-世界はどこまで知ることができるか?-」

私達は、何を感じ、知るのであろうか? 期待に胸を膨らませ、ワクワクしている。                       

レポート; チャーミー (梶原 千春) 写真提供; 横浜トリエンナーレ組織委員会事務局

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【関連サイト・記事】

<ヨコハマトリエンナーレ2011 第3回記者会見資料>

http://yokohamatriennale.jp/pdf/200110526releaseW_ja.pdf               

「ヨコハマトリエンナーレ2011」第3回記者会見[1]    大きな愛を届けたい、アートの力を新たな希望の架け橋に

https://takearteazy.wordpress.com/2011/06/05/the-third-press-conference/

 

「ヨコハマトリエンナーレ2011」第3回記者会見[2] アーティスト魂かけて生み出される新たな視点

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