「アーティスト・ランのプロジェクト」山岡佐紀子によるインタビュー (3) PAE

Nina Wijnmaalen
Nina Wijnmaalen photo by Mladen Suknovic

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PAE

(パフォーマンス・アート・イベント)
http://performanceartevent.nl/

「パフォーマンス・アート・イベント」は、オランダの港町ロッテルダムの若い3人のアーティストたちにより運営されている。オーガナイザーは、リーダー格のニナ・ボアスNina Boas、マータイ・ステリンガMartjin Stelinga、それからイケ・トリンクスIeke Trinksの3人。マータイは現在サウンド系になったそうだが、3人とも基本的にはビジュアルアート系のパフォーマンスをするアーティスト。私は、イケと2011年3月にスペインで知り合い、仲良くなった。4月にストックホルムに来る予定があったので、彼女たちのイベントにも参加することになった。私が参加したイベントは、5月8日と9日の2日間ではあるが、先日このブログでも紹介した、PAS(パフォーマンス・アート・スタディ)との共催の形をとっており、イベントは4月27日から始まった。イケ自身が2010年にベルリンでPASに生徒として参加したことがあり、ロッテルダムの若者に経験をと、共催をオファーしたのだ。8日と9日のパフォーマンスイベントでは、PASの生徒6人と、教師2名もパフォーマンスを行った。以下、インタビューは、イケ・トリンクスに行った。
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イケ Ieke Trinks
イケ Ieke Trinks

———— PAEを始めた経緯などをお聞かせ下さい。
イケ・トリンクス : PAEは2008年に、ニナとマーティンの二人が始めました。ふたりは、フィンランドのパフォーマンスアートフェスティバルに参加し、パフォーマンスアートが、どれほど、観客に関心を持たれているのかを見て、刺激を受け、それをロッテルダムで行ないたいと思うようになりました。ここでは、パフォーマンスアートはあまりポピュラーではありません。アートの専門家ですら、よくは知らないと思います。また、誤解もされていると感じていました。国際レベルのパフォーマンスアートには、いろんな種類があることを見てもらいたいと思いました。そして、さらに、重要なことは、若い人たちやまだアートを始めたばかりの人たちに、チャンスの場を作りたいと考えました。私自身は、2009年からの参加です。ニナが私に協力を求めたのです。私もとても、興味があったので、参加しました。わたし自身、パフォーマンスアートは始めたばかりで、オーガナイザーとして働くことで、学ぶ事が多いだろうと期待しました。

——- あなたはどうしてパフォーマンスアートに興味を持つようになったのですか?
私は、以前は、写真やビデオの作品を作っていましたが、やりたいことがその方法では充分ではないと感じていました。それまでの作品にも、すでにパフォーマンス的な要素があり、身体を使うことに興味がありました。また、ある展覧会が終わった後に、材料の多くをゴミにしてしまったことがありました。私はそのことで悩みました。私は、この世界にある、私たちが作り出した様々な「物」に対して責任があり、この消費社会に対する私の意識を示さなくてはならないと感じました。もちろん、私は天使ではないので、なおも作品のために材料を買ったり、飛行機に乗ってエネルギーを使ったりして、環境破壊に加担していますが。私がパフォーマンス作品にひかれたのは、それが基本的に「物」ベースのものではないというところです。パフォーマンスの作品は、物ではなくて、時間をつくります。パフォーマンスアートは、自分の理想を完成させるというよりは、アイデアのプロセスであり、それを発展させる場所です。私のその実践を、観客の目前で、あるいは観客とともに行なうことにより、その問いをわけ合い、交流することができると思います。そのことに、私は魅力を感じています。

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ニナ Nina Boas
ニナ Nina Boas
マータイ・ステリンガMartjin Stelinga
マータイ・ステリンガMartjin Stelinga

———- PAEでは、どんなことをしていきたいですか?

まだはっきり方針が決まりません。できたら、毎年、インターナショナルなイベントをしていきたいです。といって、規模を大きくしたいというような特別な野望はありません。先輩アーティストからの助言があり、去年の9月からは、毎月の小さなイベントを、始めました。ほとんど予算なしですが、アーティストや観客ができるだけ多くの機会を持つことが大切だと思いました。また、今年になって、アート・ロッテルダムというアートフェアの中でのイベントの参加という、大きなオファーもありました。彼らはパフォーマンスアートにとても興味があるようで、私たちにとってもいい機会だと思うのですが、予算や時間的に、私たちの今の能力では、ちょっと厳しいものがありました。そんなこともあり、今後のために、新たなメンバーを加えるかもしれません。
オーガナイズの方法として、何か新しい方法を考えてもいいと思います。まだ、私たちは若くて、もっと学ばなくてはなりません。私たちは、ローカルイベントとインターナショナルの両方をしたいし、パフォーマンスアートネットワークだけでなく、普通のアートのものとも関わりたいのです。
オーガナイズをすると、あるアーティストがどのように考えて作品を作るのかと言う方法を学ぶことができます。また、オーガナイザーやキュレーターが何を考えるのか、知る事ができます。

—— PAEがいつも使っている会場である、Wolfartはどういう場所なのでしょうか。

Wolfartプロジェクトスペースは、もともと、ミュージシャンであるアーティストたちによって、いわゆるスクワットされ、運営されている場所です。彼等は、主にコンサートやその他の様々なイベントをプログラムしています。Wolfartと言う名は、ストリートの名であるWolphaetから来ています。同じストリートは同じ頃に、たくさんの建物がスクワットされました。この南ロッテルダムには、New Ateliers Charlois(NAC)という名のアーティスト・ランのファンデーションがあります(2004年設立)。彼等は、地域に空きビルをみつけ、地域の住宅を供給する公社と交渉して、一定期間借り受け(例えば10年)、アーティストのためのスタジオや住居とし、安い金額で貸しています。Wolfartもその1つです。ニナはそこに住んでいるので、私たちはいつも、Wolfartを使うことができます。NACは、賃料の他にも市の開発基金のようなところから、補助金も得ています。そして、私たちの企画は、いつもNACの基金から助成を得ています。わたしが知る限り、オランダにはこのようなアーティストランのファンデーションがたくさんありますが、NACは成功している例として、外国の都市開発組織からも招待され、紹介されることも多い有名な組織です。

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Willem Wilhelmus
Willem Wilhelmus photo by Mladen Suknovic

——- あなたは、オランダという国で活動していますが、政治的な面で社会から影響を受けることはありますか?

私自身の作品には、政治的なことは、あまり関係しません。影響があるとすれば、商品文化やコマーシャルなことに関わらないパフォーマンスアートを、私が選んでいるということでしょうか。アートは社会に向けて、ある確かな態度を示すことで、充分、政治的なのではないかと思います。
具体的に、昨今のオランダの政治的な面で言えば、アートに対する予算が大幅に削減されていることが、私たちの活動に影響しています。オランダのアーティストやアートインスティトゥーションは、80年代からずっと、非常に良い状態でやってくることができました。この30年というもの、助成金が充実しているだけでなく、プロや経験のあるアーティストには、福祉のシステムすらありました。しかし、最近、多くのインスティトゥーションは、助成が受けられなくなり、中にはやめてしまったところもあります。オランダのアートに重要な役割を持っていたとても重要なアートインスティトゥーションが立ち行かなくなってきているのは、とても、残念に思います。長い間、培った専門知識が失われてしまいます。私たちPAEも、今回の企画では、国からの助成は、落選してしまいました。確かに、パフォーマンスアートは少し、他の表現形式よりもさらに、厳しいとは思います。なぜなら、直接的にコマーシャルな要素が乏しく、収入も見込めませんから。それで、選んでもらえなかったのだと思います。しかし、私はこの状況が続くとは思いません。9月に選挙があり、政権が変われば状況が良くなる可能性があります。アートシーンからの熱心な警鐘や存在アピールがなされています。

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Yamaoka work_Blind Game
Yamaoka work_Blind Game photo by Mladen Suknovic

———- 地域社会との共同企画があると聞きましたが、それはどんなものですか?

ロッテルダムは、労働者クラスの都市なので、低収入や失業者、また、トルコ、モロッコ、アンティル諸島からの移民のグループがかなり多く住んでいます。いわゆる多文化社会です。市は、アートやアーティストたちの持つ雰囲気に興味を持っています。アーティストたちは協力しあって低予算でイベントを企画するのが得意だからです。しかも、ロッテルダムには、たくさんのアーティストが住んでいて、お互いにオープンで、コラボレーションや交流イベントをすることに積極的です。また、私が住んでいる南ロッテルダムは、貧しく、犯罪やドラッグの問題もあります。市当局は、これまでも問題を解決するために、多大なエネルギーや費用をかけてきました。そして、このごろは、アーティストによる、地域コミュニティを巻き込んだプロジェクトを期待するようになってきたのです。しかし、地域の人たちで、アートに関心がある人は一握りだし、彼等のサバイバルだけで充分忙しく、無理にアートを押し付けられても、という面もあるでしょう。一方、アーティストたちはソシャルワーカーのようになってしまうかもしれません。そうは言うものの、なかなかうまくいった素敵なプロジェクトもあります。たとえば Kus&Sloop は、ホテル兼アパートのプロジェクトです。 空き部屋やアパートをホテルのように貸し出します。アパートのインテリアは、近所の店が協力してセットアップします。カーテンを売る人、それを縫う人はトルコの女性、掃除する人も近所の人。そこに泊まる人は、近所のモロッコベーカリーでパンを買います。などなど、近所一帯のマルチカルチャーな人たちがアパートの運営に関わるのです。泊まる人たちは、地域多様性を、楽しむことができます。私たちPAEも今回、このプロジェクトを利用して、PASのメンバーや生徒さんたちや、アーティストたちを滞在させました。
PASのための会場として、また、パフォーマンスイベントの2日目の会場として、利用したGemaal op Zuid(ケマール)も、地域のコミュニティのためのスペースです。
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アーティスト・ランのプロジェクト
(1) PALS (performance art links)
(2) PAS (PARFORMANCE ART STUDIES)
(Index) & 山岡佐紀子プロフィール

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