
■夏休みは子どもたちがおおぜいやって来た
8月6日に始まった「ヨコハマトリエンナーレ2011」(ヨコトリ2011)も会期半ばを過ぎた。横浜美術館の前庭で、ウーゴ・ロンディノーネ《月の出、東》の12体の像と並んで写真を撮る人も多い。
今回4回めの横浜トリエンナーレは、8月会期開始で夏休み中とあっておおぜいの子どもたちがやって来た。親子で友人と楽しそうに話をしている姿をよく見かけた。学校からの宿題でチラシやパンフレットを求め、友だちと相談している中高生も多かった。
8月17日(水)の「子どもアドベンチャー 現代アートの国際展★ヨコハマトリエンナーレ2011へ行こう!」では中学生以下1人につき引率者1人が無料になり、特に多くの来場者があったようだ。同じ日に開かれた、缶バッジのワークショップや子どものアトリエが6日間行った鑑賞のためのガイドツアー「夏休み子どもフェスタ2011―トリエンナーレをみよう―」は盛況だったようだ。9月18日(休場日を除く38日目)に入場者数が10万人を超えたことも子どもたちのパワーかもしれない。

■自分の言葉で語る「キッズ・アートガイド2011」
2005年、2008年に続き3回目の子どもが行うアートガイドは、小中学生がワークショップを重ねて実際に展覧会のガイドを行うもの。8月10日初回のガイドでは、ひとつの作品を1~2人が自分の言葉で紹介し、参加者にもどんどんマイクを向けて意見を求める。参加者はキッズの話に耳を傾け、作品をよく見てそれぞれ考えることができる。
立石大河亞《大地球運河》などの3点の絵画には、「過去、現在、未来を描いているようです。たくさんの動物がいますが、何種類いるでしょう」、答えは13種類。
また、キッズと参加者が作品を見る、キッズがガイドを通じて成長する、卒業したキッズがサポートに加わると、「みる、そだてる、つなげる」のヨコハマトリエンナーレ2011の方針を実現したプログラムとなっている。

■テーマを意識させる展示空間
横浜トリエンナーレは2001年に第1回が始まり、2005年、2008年と開催を重ねて、今年2011年は4回めになる。名称も「ヨコハマトリエンナーレ2011」と、「横浜」がカタカナ書きになった。2011年のテーマ「OUR MAGIC HOUR―世界はどこまで知ることができるか?―」に沿って、未知の世界に触発された作品を紹介する。「マジックアワー」は日没後から夜になるまでのことで、黄昏時、逢魔が時と言われ、不思議なものが往来するという。77組/79人300点以上の作品に出合って違う世界を見つけてみたい。
また、運営母体が国際交流基金から横浜市に移り、横浜美術館が初めて会場のひとつになるなど、過去3回とは大きく異なり、日本人の若手作家が多いのも今回の特徴。
横浜美術館が会場になったことで、空調の整った環境で展示でき、絵画作品が多いこと、所蔵作品を展示したことは現代美術の展覧会としては珍しいことだと思う。展示の順や隣り合った作品、同じ部屋の作品にもテーマやキーワードが感じられ、デザインされた空間展示を意識させられた。
しかし、区切られた場所も多く、暗幕を張った部屋などに見逃しやすい作品もある。部屋を回り、作品を次々に見て、休憩する場がほとんどなかったのは残念。途中で海が見えたり、ぼんやとして作品を思い返したり、同行者と語りあったりする空間と時間がほしいと思った。
もうひとつの会場、日本郵船海岸通倉庫(BankART Studio NYK)ではダイナミックな空間で、横浜美術館と対照的なイメージを受けた。両会場と特別連携プログラム会場(新・港村、黄金町バザール2011)をつなぐ無料バスは、会場を歩いて疲れた足を休めることができありがたい。ヨコハマ創造都市センター(YCC)での展示や看板作品が点在し、横浜駅、馬車道駅などでポスターは見かけたが、街中にヨコハマトリエンナーレを印象付ける作品や旗などが少なく、美術館の展覧会とは異なり、期待を膨らませ市民を引き付けるものが少ないのがちょっとさびしい。
ご参照ください。
◆夏休み子どもフェスタ2011―トリエンナーレをみよう―
子アト通信 2011年09月02日 注)「子アト」は横浜美術館「子どものアトリエ」のこと。
http://www.yaf.or.jp/yma/atelier/2011/09/
◆8月1日【「キッズ・アートガイド2011」が始まりました!】 ヨコトリレポート
https://www.yokohamatriennale.jp/report/?cat=5
レポート・写真 2011年9月25日現在 はしもと のりこ