もうひとつの会場、日本郵船海岸通倉庫(BankART Studio NYK)ではダイナミックな空間で、横浜美術館と対照的なイメージを受けた。両会場と特別連携プログラム会場(新・港村、黄金町バザール2011)をつなぐ無料バスは、会場を歩いて疲れた足を休めることができありがたい。ヨコハマ創造都市センター(YCC)での展示や看板作品が点在し、横浜駅、馬車道駅などでポスターは見かけたが、街中にヨコハマトリエンナーレを印象付ける作品や旗などが少なく、美術館の展覧会とは異なり、期待を膨らませ市民を引き付けるものが少ないのがちょっとさびしい。
A (三木あき子氏): 横浜美術館は現代美術を専門にしている美術館ではない。多くの国際展では、新しい発見・旬のアーティスト達・新作にこだわる傾向があるが、いま一度新しさとは何か?を問い直してみたかった。美術館所蔵コレクション作品と現代美術作品を組み合わせて展示することにより、年代ものの名画が新しさを増し、新しい解釈が生まれるのではないか? との考えをベースに、現代美術作品はじめ異なるジャンルの作品・妖怪グッズをいれた形にした。
A (逢坂 恵理子氏) : 今回は、本当の意味で本展にとって分岐点になったと思う。新しい視点・海外の方に日本の作家を紹介することを軸とした展覧会構成である。国際的な視点・ナショナルプロジェクトということよりも、ヨコハマトリエンナーレを通して、「日本」を多くの人に知ってもらいたい、海外の優れた作品を国内外の方々に知って頂きたい、そのことを継続して考えていきたい。
A (三木あき子氏) : 本展開催にあたり。国際性を問い直してみたい考えがあった。 国際展の方向性として、海外の作家を紹介するだけでなく、日本の作家も海外に発信する必要性を感じ、前回と比較すると多くの日本人作家の方にご参加頂いた。
ジュン・グエン=ハツシバ/ Jun NGUYEN-HATSUSHIBA 1968年 東京都生まれ。ホーチミン(ベトナム)在住。
Jun NGUYEN-HATSUSHIBA 《Breathing is Free: JAPAN, Hopes & Recovery 2011 Photo:NguyenTuan Dat / Nguyen Ton Hung Truong Courtesy the artist and Mizuma Art Gallery
街を走りながら、地球のドローイングを描くプロジェクトを展開している。これは、移動をしいられる難民の人々の痛みを身体で図ろうとするコンセプトから生まれ、走る道筋で絵を描き、街の異なる見え方も提示した作品である。当初、8月6日からヨコハマトリエンナーレがスタートすることをふまえて、菊の花の形を描き広島へのメモリアルにしたいとしていた。東日本大震災後、いてもたってもいられなくなり、ホーチミンを走りはじめるとともに、ホーチミンで走って描いた桜の形と横浜のサポーター達が走って描いた桜の姿を合体する形に作品《Breathing is free》の内容を変更した。震災で被災した人々が、日本のみんなが元気をとりもどせるようにヨコハマトリエンナーレで花を咲かせる。
ジェイムス・リー・バイヤース/James Lee BYARS 1932-1997年 ミシガン州デトロイト(アメリカ)生まれ。カイロにて没。
97年に亡くなった作家。作品の中に一瞬で消えてしまうような「はかなげな機能」をもち、近年再評価がすすむ。今回、《Five Points Make a Man》5つの点が人間をつくるというタイトルに基づいたパフォーマンス・インスタレーションを展示。このパフォーマンスは全てどのようにやるか決められていたが、作家は実際のパフォーマンスを見ることなく亡くなった。
Dewar & Gicquel《Otter and Trout》 Private collection, Paris, France View of the exhibition Dewar &Gicquel, FRAC Basse Normandie, Caen, 2007 Photo Marc Domage COURTESY GALERIE LOEVENBRUCK, PARIS
古代から現代に至る様々な神話・ポピュラーなイメージを異種混同させて、動物彫刻的な作品を製作する作家。人間が本来持つ原始的なエネルギーを作品で表現したい、と現地フランスでインスタレーションを制作中。横浜美術館と日本郵船海岸通倉庫(Bank ART Studio NYK)に展示予定。
Jeppe HEIN《Smoking Bench》 2002 Installation view at ARoS, Denmark, 2009 Photo by Ole Hein Pedersen Courtesy: Johann König, Berlin, 303 Gallery, New York and SCAI THE BATHHOUSE, Tokyo