横浜トリエンナーレ2011の方向性について: 三木あき子 (横浜トリエンナーレ2011アーティスティック・ディレクター)

第5回横浜トリエンナーレ学校2011 トリエンナーレ学校
「中間報告:アーティスティック・ディレクターが語る、横浜トリエンナーレ2011の方向性」
三木あき子 (横浜トリエンナーレ2011アーティスティック・ディレクター)

日時:2011年2月23日(水)19:00~20:30
場所:ヨコハマ創造都市センター(YCC)
主催:横浜トリエンナーレ組織委員会

第5回トリエンナーレ学校が開催され、横浜トリエンナーレ2011のアーティスティック・ディレクター の三木あき子さんから、これまでたずさわってきた国内外の展覧会などの紹介とともに、横浜トリエンナーレ2011の方向性についての講演がありました。

三木あき子さんは、2000年よりパレ・ド・トーキョーのチーフ・キュレーターなどの仕事のためパリを拠点に活動をしています。台北ビエンナーレ(台湾)、アジア・パシフィック・トリエンナーレ(オーストラリア)など国際展の経験も数多く、また、2008-2009年森美術館で開催された「チャロー・インディア」ではゲスト・キュレーターを務めています。


今回、横浜トリエンナーレ2011の方向性について以下のような発言があり非常に興味深かったです。すなわち、日本で開催されてきた国際展には二つのタイプがあり、一つは海外の有名アーティスト等を数多く招聘する国際的スタイル(横浜トリエンナーレ2001および2008はまさにこの典型と思います)か、もう一つは町村おこし的な方向性をめざした展覧会(例えれば、越後妻有トリエンナーレや別府混浴温泉世界などが該当すると思います)が開催されてきました。しかし三木さんは「横浜トリエンナーレ2011」についてはそのどちらでもない、ちょっと立ち位置のわからないような、今までとはまったく異なるタイプの国際展を目指してゆきたいと語っていました。メインテーマは「世界をどこまで知ることができるか」という問いです。科学や理性で把握出来ないことも伝え、さらなる可能性、より柔軟な世界の捉え方を提示したいと。


パリをベースに長く活動してきた三木さんにとって、パレ・ド・トーキョーにおける主な企画の方向性は、異文化の交差、西洋と非西洋の間、ヨーロッパとアジアの対比というテーマを指向していたようです。

振り返ってみれば、私たちは現代美術を西洋的な見方、すなわち主(subject)と客(object)が対比した二元性のなかで常に新しい世界の見方の提示を、驚きをもって受け入れてきました。デュシャンからボイスを経て今日まで。そして、ここでの前提としている観るという行為はすでに主と客が分離しているから成立するのです。

今回、三木さんの講演を聴きながら連想していたのは鈴木大拙の「東洋的な見方」です。禅の布教のため長く米国に滞在した大拙が帰国し執筆した本のなかで、「西洋では物が二つに分かれてからを基礎として考え進む。東洋はその反対で、二つに分かれぬさきから踏み出す」と述べています。大拙は二元性に基づく世界観を否定している訳ではないのですが、西洋的な見方の行き詰まり、閉塞感を打破するのに東洋的な見方が今こそ大きく貢献すると語っています。

ほぼ半世紀の時間差はあるものの、三木さんと大拙との間には、海外から東洋を強く意識している共通点があるように感じます。今回の横浜トリエンナーレ2011では、古今東西のアートをフュージョンした、60余作家プラス横浜美術館コレクションを利用した展示となるそうです。感性に訴えかける作品、つまり意外な出会いや、観客がイマジネーションを働かせそれぞれの鑑賞ストーリーが紡ぎ出せる展覧会を目指すとの事。今まで、我々が体験した事が無いような新しいタイプの展覧会が期待出来るのではないでしょうか。

三木さんから提示された問い「世界をどこまで知ることができるか」。この問いの中には、われわれが普段意識していない、主も客も区別しない直感的世界観を突きつけられてるように思います。

(文責:岩田稔夫)

参照書籍:新編「東洋的な見方」鈴木大拙著、岩波文庫

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